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日本企業のレーザーと『レッカー車』によるスペースデブリ対策

2022年4月27日撮影。東京でのAFPのインタビューの際に、磁石を用いて非稼働中の人工衛星を回収するプロジェクトについて話すアストロスケールのゼネラルマネージャー伊藤美樹氏。(AFP)
2022年4月27日撮影。東京でのAFPのインタビューの際に、磁石を用いて非稼働中の人工衛星を回収するプロジェクトについて話すアストロスケールのゼネラルマネージャー伊藤美樹氏。(AFP)
2022年3月15日撮影。東京でAFPのインタビューに応じる、東京に本社を置いて人工衛星の運用と放送事業を行うスカパーJSATのエンジニア福島 忠徳氏。(AFP)
2022年3月15日撮影。東京でAFPのインタビューに応じる、東京に本社を置いて人工衛星の運用と放送事業を行うスカパーJSATのエンジニア福島 忠徳氏。(AFP)
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09 Jul 2022 01:07:29 GMT9
09 Jul 2022 01:07:29 GMT9

東京:レーザービームや木造人工衛星から、宇宙のレッカーサービスまで、日本のスタートアップは拡大する環境問題、スペースデブリの対策を模索している。

使用済み人工衛星、ロケットの一部、衝突の残骸といったゴミは、宇宙開発が始まって以来、蓄積されてきており、この数十年で問題は加速している。

「多数の人工衛星が次々と打ち上げられる時代がやって来ています。宇宙はますます混雑するでしょう」と語るのは、「宇宙の持続可能性」に特化した企業であるアストロスケールのゼネラルマネージャー伊藤美樹氏。

「このままでいくと、宇宙を有効活用することができなくなることを示唆するシミュレーションもあります」と同氏はAFPに述べた。「そのため、手遅れになる前に天体の環境を改善しなくてはなりません」

欧州宇宙機関(ESA)の推計によると、地球周回軌道には「宇宙船の機能を損なう」のに十分な1センチメートル以上のデブリが約100万個あるという。

1月の中国の人工衛星とのニアミスから、昨年の国際宇宙ステーションのロボットアームに空いた5ミリの穴まで、デブリによる問題が既に発生している。

「スペースデブリの量がどれほどのスピードで増加するかを正確に予測するのは困難です」と、日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)の上級研究員である山元透氏は語る。

しかし、「それは宇宙空間の持続可能な利用についての現実の懸念をもたらしています」と同氏は述べている。

現在では人工衛星はGPS、ブロードバンド、銀行データに欠かせないものであり、衝突は地球に重大なリスクをもたらす。

福島忠徳氏は、東京に本社を置いて人工衛星の運用と放送事業を行うスカパーJSATでエンジニアとして働く中で、この問題の大きさを目の当たりにしてきた。

「ひとつの静止衛星が、1年間におよそ100回の『デブリ接近』警告を受けるでしょう」と同氏はAFPに述べた。

国際的な「人工衛星廃棄ガイドライン」には使用済みの人工衛星を「墓場軌道」に移動させるといったルールが定められている。しかし、デブリが増加しているため、さらなる対策が必要だと、専門家たちは言う。

福島氏は2018年に社内スタートアップを立ち上げており、レーザービームを使ってスペースデブリの表面を気化させ、対象を新たな軌道に押し出すエネルギー振動を生み出すという構想を立てている。

レーザーを照射するということは、多くが秒速7.5キロという弾丸をはるかに超える速度で動くデブリに接触する必要がないということだ。

今のところ、このプロジェクトは実験段階にあるが、福島氏はいくつかの研究機関と協力し、2025年春までにこのアイデアについて宇宙でテストを行いたいと考えている。

福島氏によると、日本企業は欧州や米国の企業と共に、解決策の開発を主導しているという。

一部のプロジェクトはより進んでおり、そのひとつに、非稼働中の人工衛星を磁石によって集めるアストロスケールの宇宙版「レッカー車」がある。

「もし車が故障したら、レッカーサービスを呼びますよね。人工衛星が故障したままそこに留まっていると、デブリとの衝突リスクがあり、迅速に回収する必要があります」と、伊藤氏は説明する。

同社は昨年テストに成功しており、やがては顧客の人工衛星にレッカー車のフックに相当する「ドッキングプレート」を搭載し、将来の回収を可能にするという構想を立てている。

欧州宇宙機関と契約を結んでいるアストロスケールは、2回目のテストを2024年末までに実施する予定であり、その後すぐにサービスを開始することを目指している。

その他の取り組みでは、この問題に対する根本的対策が提案されている。デブリを生み出さない人工衛星を作るのだ。

京都大学と住友林業はロケットに積まれて軌道に入り、地球に突入する際に安全に燃え尽きる木造人工衛星の構想を立てている。

このプロジェクトも初期段階にあり、3月に国際宇宙ステーションへ木材が届けられた。木材が宇宙線にどのような反応を示すかテストするためだ。

各宇宙機関は独自のプログラムを進めており、JAXAは3トン以上の巨大デブリに焦点を当てている。

また、世界では、米国を拠点とするOrbit FabやオーストラリアのNeumann Spaceが、軌道上での燃料補給によって人工衛星の寿命を延ばすといったアイデアを提案している。

問題は非常に複雑なため、さまざまな解決策が必要となるだろうと、JAXAの山元氏は述べている。

「万能薬はありません」

AFP

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