
ワシントン: 複数の欧米メディアは13日、バイデン米大統領が日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画に深刻な懸念を表明すると伝えた。再選を目指す11月の大統領選をにらみ、支持基盤の労働組合が買収に反対していることを考慮。安全保障や産業基盤、雇用に悪影響を与える恐れに言及するとみられる。
報道によると、バイデン氏は4月10日に予定されている岸田文雄首相の訪米前に声明を出す見通し。日本政府にも非公式に伝えたという。英紙フィナンシャル・タイムズは、反対を明言しない方向だと伝えた。
日鉄は昨年12月、USスチールの買収を発表した。ただバイデン政権は、安保やサプライチェーン(供給網)の信頼性を巡る観点から「真剣な精査」をすると表明。「適切であれば対応する用意がある」と説明していた。米議会からは買収に反対の声が上がっている。
日鉄の買収計画は現在、米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)が安保の観点から審査している。リスクが大きいと判断すれば、大統領に阻止を勧告できる。
全米鉄鋼労組(USW)は2月、「組合員と国家の利益を危険にさらす」として、買収に反対を表明。バイデン氏が労組の立場を支持していると明かしていた。
USスチールが本社を置く東部ペンシルベニア州は、大統領選の激戦州の一つ。共和党の指名が確定したトランプ前大統領も、返り咲けば「即座に阻止する」と明言するなど、買収が政治問題化している。
時事通信