
【ニューヨーク時事】新型コロナウイルスの感染者治療で多忙を極める中、電話インタビューに応じた柳澤貴裕マウントサイナイ医科大学教授が強調したのは、厳格な自粛措置と危機管理計画策定の重要性だ。
米ニューヨーク州で最初に新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは3月1日。わずか1カ月で、感染者は8万3000人を超えた。全米の感染者は21万人を超えているが、まだ感染のピークには達していない。自粛措置を継続しても米国での最終的な死者は少なくとも10万人前後に上ると推計されている。
柳澤教授によると、病院で受け入れるのは重症患者のみだが、日を追うごとに入院患者は急増。「感染力が極めて強く、事態は急激に変わる」と述べ、日本はニューヨークの事例に学び、対策を急ぐべきだと警告する。
ニューヨークでの生活は1か月前までは平常通りでしたが、新型コロナウイルスの感染力は非常に強く、状況は急速に変化しています。 - ニューヨークで働く、日本にルーツを持つロバート柳澤医師
米国で爆発的な感染拡大が起きたのは、対応が遅れたためだ。新型コロナ感染をアジアでの「対岸の火事」と考えていた米連邦・州政府は、隔離措置を取るのが遅れた。ニューヨーク州をはじめ、全米の主要都市が相次いで厳しい外出規制を打ち出した時には既に、水面下で大規模な集団感染が起きていたとみられる。
日本でもこのところ急速な感染拡大傾向が見られるが、飲食店などの閉鎖や厳しい外出規制を伴う欧米に比べ、自粛措置は甘い。さらに厳しい自粛措置を施した上で、医療崩壊を回避するため、病床や医療従事者の確保、人工呼吸器の調達・操作訓練など危機管理計画の策定が急務だ。
時事通信社