北京:中国国防省は25日、ロケット軍が同日午前8時44分(日本時間同9時44分)に模擬弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を発射し、太平洋の予定した公海上に落下させたと発表した。香港メディアによると、太平洋へのICBM発射は44年ぶり。中国の軍事力強化を巡り、米国を中心に一段と懸念が強まるのは必至だ。
中国は米本土を核攻撃可能なICBMの配備を進めているとされる。中国国防省は「発射は年次訓練計画の一環で、国際法と国際的慣例に沿っており、特定の国や目標を対象としていない」と説明したが、大統領選を11月に控えた米国をけん制する意図もあるとみられる。新華社通信は「予期した目的を達成した」とした上で、「中国は事前に関係国に通告していた」と伝えた。
関係筋によると、豪州やニュージーランド(NZ)などに近い海域に落下したとみられ、事前通告は豪、NZに加え米国に対して行われた。発射は、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に不快感を示す思惑もありそうだ。AUKUSは日本などとも連携していく方針で、米英豪3カ国首脳は今月17日、海上自動運航システムの開発で日本と協力すると表明している。
中国メディアによると、1980年に海上に向けてICBM「東風5」の発射試験を実施したことがあり、その時は30分かけて8000キロ以上飛行し、弾頭は南太平洋の予定海域に落下した。
米国防総省が2023年10月に公表した年次報告書の推計によると、中国は同年5月時点で運用可能な核弾頭を500発以上保有。30年には1000発以上になる見通しで、米国は中国による核戦力の「近代化、多様化」に懸念を示している。
中国の習近平政権は中台統一を目指し、武力行使の選択肢を放棄しない方針を表明している。交渉など平和的手段での統一が難しければ台湾侵攻に踏み切ることも想定され、侵攻作戦を成功させるためには米軍の台湾接近を阻止する必要がある。
時事通信