ワシントン:石破茂新政権の発足に当たり、米政府は石破氏が掲げる日米地位協定の改定を正面から取り合うことに慎重だ。「アジア版北大西洋条約機構(NATO)」の主張にも、懐疑的な見方が支配的。一方、岩屋毅外相や中谷元防衛相の起用は「日米の事情に精通している」(関係筋)と一定の安心感を与えている。
石破氏は9月、米シンクタンク「ハドソン研究所」に外交安全保障政策の論文を寄稿。アジア版NATOを創設し「米国の核のシェア(共有)や核の持ち込みも検討せねばならない」とつづったほか、対等な日米同盟を目指し、地位協定改定や米領グアムへの自衛隊駐留を提案した。
だが、地位協定の再交渉について、ある米政府当局者は「われわれは興味も意欲もない」と断言。アジア版NATOに関しても「実現不可能だ」とけんもほろろだ。
石破氏が台湾を訪れながら中国との対話に積極的な姿勢を示したことにも「二枚舌」と手厳しい。ただ、同氏が歴史問題で強いこだわりを見せないことは「日韓関係にとって安心材料」とみる。
米戦略国際問題研究所(CSIS)のニコラス・セーチェーニ地政学・外交政策副部長は、「アジアの安保環境は急速に悪化しており、石破氏が(米国や友好国との安保協力を強化した)前任者たちの軌道を外れることはないだろう」と静観する。岩屋、中谷両氏を中心に「自衛隊と米軍の演習や南西諸島でのプレゼンス強化を実現することが重要だ」と指摘した。
時事通信