能登半島地震の発生から1日で10カ月を迎えた被災地で、自治体による住宅被害認定調査の判定に不服を訴える住民が相次いでいる。被害が大きかった石川県の6市町によると、2次調査が行われたのは1次調査を終えた住宅の約37%に上った。判定の揺らぎや実態との隔たりも指摘され、住民の生活再建へ課題が浮かぶ。
「家の基礎が傾いている。再調査を求めるべきだ」。自宅の1次調査で「準半壊」の罹災(りさい)証明書を交付された輪島市南志見地区区長会長の古酒谷政幸さん(76)は、知り合いの専門家からそう助言を受けた。2次調査を求めたところ「半壊」に1ランク上がった。
準半壊では仮設住宅入居や公費解体の対象に原則ならず、支援金も限られる。古酒谷さんは「半壊との支援の差があまりに大きく、悩んでいる住民が多い」と訴える。
6市町への取材によると、10月下旬時点で1次調査を終えた住宅計約3万8700棟のうち、2次調査したのは約1万4200棟。輪島市の担当者は「1次はスピード重視の外観調査のため不服が多いのは仕方ない」と説明するが、中には5次調査まで進む例もある。
建築の専門家ではない自治体職員が調査する難しさも指摘される。日弁連が10月に金沢市で開いた「罹災証明問題を考える」と題するシンポジウムでは、「判定が見る人によってばらばら」「見えない部分を被害なしと見てしまうケースがある」といった報告が相次いだ。
「パパッと見て準半壊と言われた」。珠洲市の家根政秋さん(74)は判定に疑問を持ち、支援団体「珠洲ささえ愛センター」に依頼し自宅を見てもらった。「2カ所見落としがあるが、点数は上がってもわずか」との説明を建築士から受け、納得することができた。
家根さんのケースで参考になったのが、各部位の損傷状況や面積率などを記した調査票。ただ、珠洲市と能登町が住民への写しの交付を認めているのに対し、輪島市、穴水町、七尾市、志賀町は窓口での閲覧のみで、交付には情報公開請求が必要になる。
現地で支援活動をする永野海弁護士は「罹災証明書は判決のようなもの。調査票がないと、控訴(=再調査要求)すべきかどうか専門家も助言できない」と問題点を指摘する。現状では行政の窓口で不満を言いにくい雰囲気があるといい、「復興という目標に向け、自治体と住民が同じ目線に立つことが必要だ」と語った。
時事通信