
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非を最大の争点とする7日の沖縄県議選は、移設反対派の玉城デニー知事を支える勢力が議席を減らし、過半数を辛うじて維持する結果に終わった。知事は「民意は依然移設ノー」として移設阻止に引き続き全力を挙げる。政府は民意が揺らぎ始めたとみて攻勢を強める構えだ。
「予想より非常に厳しい結果だ」。8日未明、県議選の投開票を受けて記者団の取材に応じた玉城氏は、こう率直に認めざるを得なかった。ただ、苦戦の背景にはあくまで新型コロナウイルスの影響があると指摘し、「辺野古移設反対(の民意)は揺らいでいない」と強調した。
県議会の定数は48議席。知事派はこのうち25議席を獲得し、反知事派は21議席、中立派は2議席だった。2018年の知事選以降、知事派の勝利は19年の県民投票、衆院沖縄3区補選、参院選に続いて5回目だ。
ただ、改選前と比べると、知事派は1議席減。反知事派と中立派は合わせて20議席から23議席に伸ばし、1人を切り崩せば知事派と並ぶラインまで迫った。知事が勝利を喜べないのはこのためで、知事周辺は「辺野古反対が後退したとは思わないが、厳しい数字だ」と苦しさをにじませた。
一方、政府・自民党は敗北にもかかわらず勢いづいている。安倍晋三首相は8日の自民党役員会で「沖縄県議選で議席数を大きく伸ばし、善戦できたことは、大変大きな成果だった」と表明。菅義偉官房長官は記者会見で「辺野古移設容認を掲げて戦った自民党が議席を伸ばした。地元ではかなり(移設への)理解が進んできているのではないか」と強調した。
自民党幹部は、公明党が新型コロナの感染拡大を受けて候補者2人を取り下げたことが響いたと指摘し、「惜しかった。あと少しで過半数だった」と手応えを口にした。政府高官は「最高の結果だった。次の知事選は勝つ」と言明した。
移設阻止に向けて知事が打てる手は限られてきている。このため、知事は移設先の地盤改良の承認権限をフル活用し、工事に徹底抗戦する考えだ。これに対し、政府は新型コロナの影響で中断中の工事を近く「粛々と再開する」(防衛省幹部)構え。いずれも「民意はわれにあり」との姿勢で、攻防が激化しそうだ。
JIJI Press