
新型コロナウイルスの影響で人との面会が大きく制限される中、代替わりから2年目を迎えた天皇、皇后両陛下が活動の在り方を模索される日々が続いている。最近は皇居以外への外出がなく、「四大行幸啓」と呼ばれる恒例の地方訪問も今年は全て取りやめに。お住まいの赤坂御所に専門家らを招いて話を聞き、宮内庁ホームページ(HP)に発言内容を掲載する異例の対応を取っている。識者からは、外国王室を参考にインターネット交流サイト(SNS)の活用を促す声も上がる。
「平成の終焉」などの著作がある放送大の原武史教授(日本政治思想史)は「現上皇が象徴の務めとして挙げた宮中祭祀(さいし)と行幸のうち、前者はちゃんとやっているが、後者は全くできていない」と述べ、象徴天皇制のスタイルが平成とは大きく変わったと話す。
その上で、御所で専門家らの説明を聞く際、両陛下が横並びで座っている姿が公開されたことを挙げ、「天皇が主で皇后が従という感じがせず、全く対等に見える。あえてそうした写真や映像を出したところに意図を感じる」と指摘。「もし今後、新型コロナに関するビデオメッセージを出し、その際に2人が並んで出てくるようなことがあれば、平成との違いがますますはっきりするだろう」との見方を示す。
世界の王室に詳しい関東学院大の君塚直隆教授(英国政治外交史)は、英エリザベス女王をはじめ各国の王室が新型コロナについてテレビ演説などで国民に直接語り掛けているのに対し、日本の皇室にそうした動きがないことを危惧する。「政府はどこも自国ファーストかもしれないが、王室は地球環境など世界規模の問題を扱える。新型コロナなどはまさに皇室の出番だ」と語る。
「各国の王室は広報スタッフが毎日のようにSNSで写真や動画を更新しており、非常に好意的に受け止められている。宮内庁HPにメッセージを載せるだけでは十分伝わらない」。人に直接会わずにメッセージを送れるSNSの活用こそ、コロナ禍の今の状況にふさわしいと訴えている。