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レガシーなき幕切れ=安倍政権

そうした株価の好調に支えられた内閣支持率は高水準を維持し、「安倍1強」の原動力ともなった。(AFP)
そうした株価の好調に支えられた内閣支持率は高水準を維持し、「安倍1強」の原動力ともなった。(AFP)
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15 Sep 2020 07:09:21 GMT9
15 Sep 2020 07:09:21 GMT9

安倍晋三氏の7年8カ月に及ぶ歴代首相最長の在任期間は憲政史に刻まれるに違いない。しかし、その安倍政権が、確たるレガシー(政治的遺産)を残さないまま幕切れを迎えたこともまた事実だ。「志半ばで職を去ることは断腸の思いだ」。安倍氏が辞意表明の際に口にしたこの言葉は本心だろう。

2012年12月の第2次安倍政権発足以来、「アベノミクス」をはじめ、「地方創生」「一億総活躍」「働き方改革」といった看板政策を次々と打ち出した。とりわけアベノミクスの「3本の矢」に込められた大胆な金融政策は円安ドル高を誘導し、政権発足前に1万円割れしていた日経平均株価は2万円台に回復。そうした株価の好調に支えられた内閣支持率は高水準を維持し、「安倍1強」の原動力ともなった。

安倍氏は、1年の短命に終わった第1次安倍政権で「戦後レジームからの脱却」を掲げて、国家理念を追求する姿勢を明確にしたのに対し、第2次政権以降は経済重視を鮮明にしたわけだ。だが忘れてはならないのは、再登板後の時代においても最終的には国家理念追求型の政権だったということだ。その旗印が「憲法改正」だった。

特に安倍氏は17年5月、改憲派集会へのメッセージで、憲法9条への自衛隊明記と20年の新憲法施行を政権の目標とすることを訴え、改憲実現への並々ならぬ意欲を示した。また、安倍氏が改憲を争点と位置付けた19年の参院選で、自公などの改憲勢力は3分の2ラインに届かなかったが、安倍氏は改憲論議を進めることに信任を得たと強調した。

もっとも、そうした安倍氏の改憲への前のめりの姿勢にもかかわらず、国会での憲法論議は停滞し続けた。理由ははっきりしている。確かに多くの世論調査が示すように、改憲肯定論が国民の間で広がっているのは事実だが、国民の関心の方向は、一貫して改憲より医療・社会保障や景気・雇用対策だった。こうした現状に自民党幹部の間から「なぜ改憲実現を最優先するのか」との声も聞かれた。

それでも改憲をめぐる安倍氏と国民の間の乖離(かいり)がさほど表面化しなかったのは、安倍政権が好調経済を背景にした高い支持率を維持してきたからだ。しかし今年に入り、新型コロナウイルスの感染が拡大。内閣支持率が不支持を下回る状況が続いたことは、安倍氏には大きな誤算だったであろう。諸外国に比べて感染者数や死者・重症者数は少なかったものの、日本国民は政府によるコロナ対策の迷走を許さなかった。同時に、コロナ禍による経済への打撃はアベノミクスの「果実」も消し去ってしまった。

安倍政権はレガシーを求めて、外交面ではロシアとの間で北方領土問題解決を前提にした平和条約締結や北朝鮮の拉致問題解決を目指したが、いずれも進展はなかった。

一方で、安倍政権の突然の幕引きで、多くの「負の遺産」は置き去りとなった。「敵か味方か」を峻別(しゅんべつ)する手法は国民間の分断を生んだ。また、官邸主導の1強体制は官僚の過度の忖度(そんたく)を生み、森友問題は公文書改ざんという「不正義」をもたらした。森友・加計問題や桜を見る会をめぐる疑惑で安倍氏は、自身に問われた説明責任を果たしたとは言えない。

安倍氏は退陣してもなお、こうした在任中の負の遺産といかに向き合うかが問われ続けることになろう。

JIJI Press

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