
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(元首相)の失言をめぐり、政府は5日、森会長の続投を支持する方針を示した。菅義偉首相が同日の衆院予算委員会で、野党の辞任要求に対し「首相にその権限はない」と拒否した。開幕まで半年を切った東京五輪へ準備を急ぐ考えだが、森氏の釈明会見後も国内外で批判が広がっており、事態が収束するかは不透明だ。
森氏が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言した問題は5日の国会でも取り上げられた。首相は「五輪・パラリンピックの重要な理念である男女共同参画からも全く異なる」と述べ、不適切だったと重ねて指摘した。共産党の藤野保史氏が「辞職すべきだと言うべきではないか」と迫ったが、首相は「組織委は公益財団法人であり、首相としてそうした主張をすることができない」と拒んだ。
加藤勝信官房長官も5日の記者会見で、会長人事は「組織委で決めることだ」と述べ、政府として関与しないと強調。自民党の世耕弘成参院幹事長も会見で「(森氏は)反省、謝罪、撤回を表明されている。余人をもって代え難い」と擁護した。
政府は、森氏が既に発言を撤回し、国際オリンピック委員会(IOC)も問題視しない立場を示したことから、幕引きを図りたい考え。森氏はIOCのバッハ会長と太いパイプを築いているとされ、仮に組織委トップ辞任に発展すれば、新型コロナウイルスの感染拡大で開催が危ぶまれる五輪の準備に混乱を招きかねないと危惧しているためだ。
ただ、野党は「本当に言語道断。進退はご自身が判断する問題だ」(国民民主党の榛葉賀津也幹事長)など非難の声を強めている。森氏による4日の釈明会見はインターネット交流サイト(SNS)上で「逆ギレ会見」などと評され、一段と反発を招く結果となった。
こうした中で森氏の続投を許した政府に、今後世論の批判の矛先が向かう可能性もある。5日の衆院予算委で、立憲民主党の逢坂誠二氏は「国民は納得するだろうか。私は、そうは思わない」とただした。
政府高官は「世論にどういう声があるのかは見ていかなくてはならない。発言内容はかなり深刻だ」として、問題が尾を引く可能性を認め、自民党幹部も「世論の沈静化を待つしかない」と語った。
JIJI Press