
厚生労働省は12日、薬事・食品衛生審議会の専門部会を開き、米製薬大手ファイザーが申請した新型コロナウイルスワクチンの承認を了承した。厚労省は14日にも、緊急時に審査を簡略化できる「特例承認」に基づき、国内初の新型コロナワクチンとして正式承認する。医療従事者への先行接種は17日にも開始される。
ワクチン接種が進むことで、個人の感染予防に加え、感染拡大が抑えられるとされる「集団免疫」獲得への期待も高まる。ただ、優先接種される医療従事者や高齢者らを除く一般の人への接種開始時期は未定だ。
ワクチン承認の了承を受け、取材に応じる田村憲久厚生労働相=12日夜、東京都千代田区
ワクチン承認の了承を受け、取材に応じる田村憲久厚生労働相=12日夜、東京都千代田区
田村憲久厚労相は12日夜、記者団に対し、感染を阻止する「中和抗体」の値が日本人でも接種後に上昇したことを確認できたと説明。「国民の健康を守るのに大きな意味がある」と述べた。
同社ワクチンは、遺伝情報を記録した「メッセンジャーRNA」の一部を人工合成して作製。接種後、体内に新型コロナのたんぱく質が作られ、それに対する抗体ができて免疫を獲得する。同社の臨床試験(治験)では95%の予防効果が確認された。接種部位の痛みなどがあり得るが、重篤な副反応はほとんどないとされ、欧米で接種が進む。
同社は昨年12月に国内承認を申請し、1月末には日本の治験データ160人分を追加提出した。年内に1億4400万回分を供給する契約だが、確保した注射器に問題が判明し、接種可能者は想定の7200万人から減る恐れもある。
接種は努力義務の位置付けで無料。対象は16歳以上で、過去にワクチンの成分で強いアレルギー反応「アナフィラキシーショック」が起きた人は対象外にする。国立病院など100カ所の医療従事者1万~2万人から始め、厚労省が副反応の有無を調べる。3月中旬には他の医療従事者ら約370万人にも接種を始め、65歳以上の高齢者約3600万人には4月1日からの開始を目指す。優先接種は基礎疾患を持つ人などに順次拡大される。
ワクチン第1便は12日午前にベルギーから到着した。零下70度で保管される。超低温冷凍庫を備える医療機関などの「基本型施設」は約1万カ所指定され、同施設や冷蔵輸送された別会場で接種が行われる。
政府は英アストラゼネカから6000万人分、米モデルナから2500万人分の供給を受ける契約もそれぞれ締結。アストラゼネカは5日に承認申請している。
JIJI Press