
山梨、静岡、神奈川各県などでつくる「富士山火山防災対策協議会」は26日、富士山噴火時のハザードマップを改定した。従来版は国が2004年に策定したもので、17年ぶりの改定。溶岩流や火砕流の届くエリアが広がり、溶岩流の到達予想が約10時間早まった地域もある。
協議会は最新の知見に基づき18年から改定作業を実施。過去5600年間の噴火を基に、火口範囲を山頂から半径4キロ以内全域にするなど拡大した。溶岩の想定噴出量を過去最大規模の噴出を参考に従来の約2倍の13億立方メートルとしたほか、火砕流も約4倍の1000万立方メートルに更新。地形データも前回より詳細に設定した。
その結果、溶岩流が達する可能性のある自治体は、従来の2県15市町村から神奈川を含む3県27市町村に拡大。山梨県富士吉田市の市街地への到達時間は約2時間と、従来版から約10時間早まった。神奈川県では相模原市に約9日後、小田原市に約17日後に到達。東海道新幹線に約5時間後に達するなど、交通機関への影響も見込んだ。
火山灰などが高温ガスと共に高速で流れ下る火砕流は、北東方向と南西方向で延びると想定。東富士五湖道路に最短6分で到達すると推計され、主要道路が寸断される懸念がある。
今回のマップは、示された全ての範囲に同時に溶岩などが押し寄せるものではない。改定作業に当たった山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長は協議会後の記者会見で「(噴火時は)実際にどこで起こったかをきちんと把握して、正しい(避難の)方策を取る努力が必要。そのためにこのハザードマップを使ってほしい」と語った。
協議会は21年度から広域避難計画の改定に向け、被害想定などを見直す。各自治体も防災計画の見直しに着手。政府は活動火山対策特別措置法に基づく警戒地域の追加指定に向け検討を始める。相模原市の担当者は「可能性は低いかもしれないが、シミュレーションを示された以上、住民が避難できるように地域防災計画の修正をしていかなければならない」と話した。
JIJI Press