
バグダッド:イランが支援するイラク民兵組織の司令官が、先月のイラク・シリア国境付近の米国の空爆により組織のメンバー4人が死亡したことを受け、米国に対する報復を誓っていることが明らかになった。
民兵組織カタイブ・サイード・アルシュハダ(Kataib SayyidAl-Shuhada)のアブ・アラー・アルワラエ司令官は、バグダッドでAP通信との独占インタビューに応じ、イランの大統領選挙で強硬派のイブラヒム・ライシ司法府代表が勝利したことで、これからの4年間は中東全体でイランが支援する過激派グループを強化するだろうとの期待を示した。
今回のAP通信のインタビューは、アルワラエ司令官が国外の報道メディアのインタビューを受けた稀なケースである。インタビューは5日、バグダッド市内のティグリス川沿いの一角にあるオフィスで行われた。
6月27日、米空軍はイラク・シリア国境付近で空爆を実施した。標的は、イラク国内でのドローン攻撃の支援に親イラン武装グループが利用していたと米国防総省が見ている施設であった。この空爆で4人の民兵が死亡した。
シーア派を中心とする民兵のイラク政府が認可した上部組織、人民動員軍は、米国の攻撃の標的となった組織を含む傘下組織の民兵たちはダーイシュの侵入を防ぐ任務に就いていただけだと述べ、武器庫の存在も否定している。
空爆の翌日には、シリア東部の米軍がロケット弾による攻撃を受けた。死傷者は報告されていない。
米国は、バグダッドの米国関係施設およびイラク全土の軍事基地を標的にした攻撃(そのほとんどはロケット弾によるもの)について、イランが支援する民兵組織を非難してきた。最近は、ドローンの使用など、民兵側の攻撃はより巧妙になってきている。
米軍の当局者たちは、イラクの米軍基地を狙うドローン攻撃に対してますます警戒を強めている。ドローンによる攻撃がより頻繁に行われるようになったのは、昨年バグダッド空港近くで米軍のドローンがイランのカセム・ソレイマニ将軍を殺害して以来である。この攻撃では、イラクの民兵指導者アブ・マフディ・アル・ムハンディス氏も殺害された。米軍の攻撃は、イラク国民議会の主にシーア派の議員たちの怒りを呼び、同議会は決議(拘束力はない)を可決してイラク政府に外国の軍隊を国内から撤退させるよう圧力をかけた。
4月中旬には、イラク北部クルド人自治区の都市エルビルの国際空港の軍事基地エリアを標的に、爆発物を搭載したドローンによる攻撃が試みられた。死傷者や損害は発生していない。同基地は、米軍も使用している。
米国当局は、イランが支援する民兵組織が4月以来少なくとも5回のドローン攻撃を行ってきたと述べている。
5日月曜日の真夜中過ぎ、バグダッドの米国大使館付近でドローンが撃墜された。死傷者はいなかったという。2人の米軍当局者が、ドローンはイランの代理組織によって発射されたもので、爆発物を搭載した事実上の兵器であり、バグダッドの米国主導の連合軍基地付近の上空で不審な飛行を行っていたと説明している。
同当局者たちによると、今はまだドローンの種類の特定には至っていないとのことである。米国大使館は、基地施設の防衛システムは「空からの脅威に対処し、排除した」と発表した。大使館の声明は、攻撃を「調査するためにイラクのパートナーと協力している」とも付け加えている。
アルワラエ氏はひげを蓄え、黒いシャツとズボンにオリーブグリーンの野球帽という姿で取材に応えた。自らが率いる組織の民兵たちが将来の攻撃でドローンを使用する可能性があると、インタビューの中で同氏は示唆したが、詳しい説明は与えなかった。組織が過去にイラク駐留米軍に対してドローンを使用したことがあるかという質問に対しては、アルワラエ氏は明確な返答を避け、話題を変えてしまった。
「私たちは殺害された殉教者たちに恥ずかしくない作戦を実行したいと考えている」とアルワラエ氏は6月下旬に亡くなった4人の兵士に言及しながら、報復攻撃を行う意図を明らかにした。 「たとえ時間がかかっても、実行したいと思っている。時期は大事ではない。」
「私たちは、『彼らは米国人に復讐を果たしたのだ』と誰にでも分かる作戦にしたいと考えている」とアルワラエ氏は語った。 「作戦は、空や海から、イラクの国境沿いで、地域内で、その他どこからでも(実行できる)質を重視したものになるであろう。言わば制限のない戦争行為だ。」アルワラエ氏がインタビューを受けたオフィスにはソレイマニ司令官のポスターが飾られていた。隣のテーブルに置かれた額入りの写真には、レバノンの民兵組織ヒズボラの指導者、サイード・ハッサン・ナスララ師と並んだアルワラエ氏が写っている。
アルワラエ氏は、来月就任する予定のイランの新大統領、ライシ氏を称賛し、同氏の任期はイランが支援する民兵グループにとって「最高の時となるだろう」と述べた。
先月の当選から数日後、ライシ次期大統領は選挙後の最初の発言で、バイデン米大統領との会談や、イラン政府の弾道ミサイル計画および地域の民兵組織への支援についての交渉の可能性を否定した。
かつてイラクで米軍の捕虜となった経験のあるアルワラエ司令官は、シリアで内戦が勃発してから1年後の2012年に、隣国であるシリアに最初に行ってバシャール・アサド大統領の軍隊と戦ったのは彼の部下たちだったと誇らしげに語った。彼らの最初の使命は、首都ダマスカスの南にあるシーア派の神聖な宗教施設を守ることだったという。アルワラエ氏の部下たちは後にシリア各地で戦闘に従事した。
イランの支援を受けた兵士たちが地域全体からシリアの紛争に加わり、アサド大統領側に有利な勢力関係を崩す役目を果たしている。現在もイランが支援する数千人の兵力がシリアに残っており、その多くはイラク国境近くのブカマルとマヤディーンの町のに配備されている。
アルワラエ氏はまた、イラクの議会選挙が来年4月まで延期される可能性があるとして、10月に予定通りに行われるとは予想していないと述べた。同氏は、この遅れは、酷暑となる夏季の大規模な停電の問題を含む、現在のイラクの深刻な危機に原因があるとしている。
AP