
東京:アスリートたちは選手村に入り、世界のメディアも到着しているが、多くの日本人からは東京でのオリンピック開催前日であるにも関わらず応援する声はほとんど聞こえてこない。
海外から応援に来て街をうろつくファンたちもおらず、アスリートたちは本人や一般の日本人たちが新型コロナウイルスに感染しないようにバブル方式で選手村から会場へと連れていかれている。
ほとんどすべての会場では日本人も観戦することができず、23日に新国立競技場で行われる開会式の観客数は約900人のみの予定だ。そのうち日本人はわずか150人ほどだ。
近現代の歴史においては初めて延期され、本来の日程から1年後にようやく開催されることとなった東京オリンピック競技大会だが、開催の直前であるにも関わらず多くの日本人がオリンピックらしい雰囲気をあまり感じていないのも不思議なことではない。
「街中がお祝い気分でいっぱいになった前回のオリンピック(1964年)とはまったく異なるものです」と、22日に銀座の高級街を散歩していた80歳のフクイミチコさんは言う。
銀座はTOKYO 2020と書かれた旗や広告で飾られ、未来的なオリンピックとパラリンピックのマスコットたちがバスやビルに張り付けられている。しかし、それらを除けば、世界のトップアスリートたちが各国から来て東京へと降り立ったという事実を示すものはほとんど見られない。
東京での感染者数の増加により、パブリックビューイングのイベントはすべて中止となった。緊急事態宣言により、レストランやバーは開幕式の始まる時間でもある午後8時までに閉店しなければならなくなり、アルコールの提供を禁止されている。
オオヌマセイラさんはオリンピックが延期される前に抽選でのチケット争奪戦に参加した何千人もの日本人の1人だ。しかし、今ではテレビで観戦する気にすらならないかもしれないとオオヌマさんは言う。
「新国立競技場での決勝戦のチケットが当たったんです」と29歳の主婦であるオオヌマさんはAFPに語った。
「無観客での開催が決定してとてもがっかりしました。関心をすっかり無くしつつあります」と、オオヌマさんはオリンピックの選手や関係者が滞在する選手村から遠くない場所にある江東区にて述べた。
「心からオリンピックを歓迎できる気持ちではないんです。そこに喜びを感じることがまったくできなくて」
江東区に暮らすホリサトシさんは、現在の盛り上がりに欠ける雰囲気からして、2人の小さな娘たちがオリンピックのことを数年後に果たして覚えているのだろうかと思うという。
「私は多くの会場がある江東区に暮らしていますが、近所では一切熱気が感じられません」と、柔道と野球をテレビで観る計画である39歳のホリさんは言う。
「娘たちが数年後にも今回のオリンピックのことや、大会が実際に江東区で開かれたことを覚えてくれていたらいいなと思います。私が期待しているのはそれくらいです」
しかし、制限があるにもかかわらず、オリンピックの雰囲気を強く感じている人たちもいる。今週のソフトボールを皮切りにオリンピックの試合の数々が行われる福島県に暮らすニシモトユミコさんもその1人だ。
「五輪をやっているんだなという感じがします」と、ニシモトさんは言う。ニシモトさんは2011年の津波と原発事故によって影響を受けた福島県に2万本の桜の木を植えるという地域プロジェクトのリーダーを務めている。
「やっと始まったっていう感じがするんです」
福島県でもオリンピックのイベントに観客として参加することはできないが、現地の生徒たちは開会式の日に小さな聖火リレーを行う予定である。ニシモトさんはこのリレーが「オリンピックをサポートしてくれれば」と願っている。
世論調査によれば、日本人の大部分が今でも今年度のオリンピック開催に反対しており、ほとんどの人が更なる延期か完全なる中止を望んでいる。
江東区に暮らすカシワギノボルさんは、近所の人たちのほとんどはオリンピックのことなどまるで考えていないと言う。
「誰もオリンピックに関心など無いんです」と、79歳のカシワギさんは述べた。
「会場の近くに暮らす人たちですら関心が無いのだから、他の地域の人たちも関心があるのか疑問です」と続けてカシワギさんは述べた。
「アスリートたちには申し訳なく思います。彼らの責任ではありませんよ」
AFP