東京:日本の小説家、村上春樹氏が29日、月1回放送している自身のラジオ番組で日本の首相を批判した。菅義偉氏は新型コロナウイルス感染症の急増やパンデミックに対する国民の懸念を無視している、と村上氏は述べた。
村上氏は、菅氏が先月、パンデミックで延期された東京五輪の直前に述べた、「長いトンネルにようやく出口が見え始めている」というコメントを引用した。五輪が始まってから、1日の新規感染者数は全国で約5倍、東京では3倍以上になっている。
「もしね、出口が本当に見えていたんだとしたら、菅さんはお年の割に、すごく視力が良いんでしょうね。僕はね、菅さんと同い年だけど、出口なんて全然、見えていません」と72歳の村上氏は述べた。
「この人、聞く耳をあまり持たないみたいだけど、目だけは良いのかもしれない。あるいは見たい物だけ見ているのかも知れない」と同氏は述べた。
村上氏は以前、政治家は官僚が用意した原稿を読み、人々の心に届くような力強いメッセージを伝えていないと批判していた。
「なかなか出口が見えて来ない状況ですが、僕らは今、ここにあるものを何とか目いっぱい活用して、本当に出口が見えてくるまで、うまく生き延びて、やっていくしかありません」と村上氏は述べた。
菅氏はワクチンの効果について楽観的すぎると思われており、健康不安や抗議行動が広がっているにもかかわらず、五輪とパラリンピックを開催したため批判にさらされている。菅政権の支持率は、就任直後の昨年9月は約70%だったが、今月は30%以下まで急落している。
菅首相は先週、新型コロナウイルス感染症の緊急措置を日本の約4分の3に拡大した。
菅氏は緊急措置を拡大した際、最近開始した抗体カクテル療法を新兵器として挙げ、「明かりははっきりと見え始めている」と発言し、反発を引き起こした。同氏はまた、5月下旬から始まった日本のワクチン接種が、開始が遅れ、出足が鈍かったにもかかわらず、目標としていた1日100万回を超えるペースで進んでいることを称賛している。
日本国民の約44%がワクチン接種を完了している。菅氏は、10月か11月までに対象となっている全ての希望者の接種を終えたいと言っているが、専門家らは、感染力の強いデルタ株のせいで集団免疫は不可能だろうと言っている。
村上氏は大学卒業後、東京でジャズ喫茶を経営しながら執筆活動を開始。1979年に小説『風の歌を聴け』でデビューした後、1987年に発表した恋愛小説『ノルウェイの森』が自身初のベストセラーになり、文学界の若手スターとしての地位を確立した。『羊をめぐる冒険』『ねじまき鳥クロニクル』『1Q84」などのベストセラーでも知られている。
同氏の番組「村上RADIO」は2018年8月、東京FMで放送を開始した。29日に放送した録音番組「Music in MURAKAMI~村上作品に出てくる音楽~」では、ファンからのリクエストをもとに曲を流した。
AP