
昨年、日本の首相に就任した菅義偉氏は、長年の裏方としての職務で研ぎ澄まされた手腕と、地方出身の庶民感覚で、コロナ禍における国の舵取りに成功することを期待されていた。
しかし、ワクチン接種はつまずき、一連の緊急事態宣言は感染力の強いデルタ株の拡大抑止にほとんど役立たず、感染者数は再び急増した。また、国民の間に反対意見が広まっているにもかかわらず、72歳の菅氏は昨年から延期されていた東京2020オリンピックの開催にこだわった。
しかし、自民党総裁選と今年の総選挙を前に、菅氏の支持率は30%以下に落ち込んだ。
金曜日、党内の反発に直面する菅氏は「新型コロナ対策に専念するために退陣する」と述べ、就任後わずか1年で後任に総理の椅子を譲ることとなった。
菅氏は、首相として最も長い任期を務めた安倍晋三前首相の右腕として官房長官を務め、官房長官時代には厳しい眼差しと、時折いら立ちながら記者会見で鋭い受け答えをすることで知られていた。2020年9月に安倍氏が健康問題を理由に突然辞任し、菅氏は首相に就任した。
改革を推し進め、時代遅れの官僚機構に対抗することができる経験豊富な政治家という菅氏のイメージは、就任時の支持率を74%にまで押し上げた。
当初は、携帯電話料金の値下げや不妊治療の保険適用など、大衆迎合主義的な公約が称賛された。菅氏はまた、日本が遅れている分野である中央省庁と地方自治体のシステム統合を実現するためにデジタル庁を設立した。
しかし、政府に批判的な学者を諮問会議から外したり、高齢者の医療費に関する政策で連立パートナーに譲歩したりしたことには批判が集まった。
また、専門家がコロナウイルスの感染拡大の一因になった可能性が高いと指摘する「GoToトラベル」の中止を遅らせたことも大きな打撃となった。一方で、企業に打撃を与える緊急事態宣言に国民はうんざりしていた。
また、新型コロナ対策よりもオリンピックの開催に力を入れているとの見方も支持率を低下させた。しかし、当局はオリンピックと感染者急増との関連性を否定している。
評論家は、自粛を主とする新型コロナ対策で国民の協力を得ることができなかったなど、記者会見でのコミュニケーション能力の低さを指摘している。
オリンピックが閉幕した8月までに、菅首相の支持率は30%を下回っていた。そのため、今年中に行われなければならない国会で強い力を持つ衆議院の選挙を前に、党の幹部や若手議員に不安感が生まれ、菅首相の退陣論が取り沙汰されていた。
ロイター