
岸田文雄首相は24日午前、記者団に対し「米国と歩調を合わせ、現行の石油備蓄法に反しない形で、国家備蓄石油の一部を売却することを決定した」と正式に表明した。米国が主導する国際的な石油備蓄の放出に呼応したもので、国家備蓄の初めての放出となる。関係者によると、政府は国家備蓄の数日分を、年内にも入札で売却する方法を検討している。
バイデン米大統領は米国時間23日、原油やガソリン価格の高騰に対応するため、日本や中国、インドなどの主要消費国と共に石油備蓄を放出すると発表。米国は、世界の1日の平均石油消費量の半分に相当する5000万バレルを市場に供給する。
国内の石油備蓄には、政府による「国家備蓄」と石油会社などに義務付けている「民間備蓄」などがある。9月末現在の国家備蓄の量は145日分で、目標を大きく上回る。過去に中東の政情不安や災害時の石油不足などに対応し、民間備蓄を放出している。今回は価格抑制が目的だが、余剰分の売却のため法改正は不要となる。
経済産業省によると、国家備蓄は原油の種類の入れ替えに伴い日常的に一部をアジアのスポット市場で売却している。このため、政府は同様の手法であれば余剰分を機動的に売却できるとみている。
松野博一官房長官は24日の記者会見で、産油国への増産の働き掛けを続けると強調。その上で「ガソリン、灯油の急激な値上がりに対する激変緩和措置を着実に講じる」と述べ、経済対策に盛り込んだガソリン価格抑制のための補助金とセットで原油高対策を進める方針を示した。
時事通信