
大学入学共通テストでの記述式問題の導入見送りを受け、有識者からは17日、共通テストでの実施自体に無理があり、個別の大学が論理的思考力などを測定する体制の充実を求める声が上がった。
私立麻布高校で国語教師を務めた紅野謙介日本大教授は「導入は中止すべきだ。50万人規模の採点で正確さ、公平性を維持することはできない」と指摘。「採点しやすさを優先するあまり、能力測定に効果のない記述式問題が導入され、受験生がトレーニングすることになれば、総体として国語の能力低下を招く」と懸念する。
紅野氏は「2次試験で記述式を課していない大学があれば、積極的に課すか入学前教育などの充実でカバーするよう(文部科学省が)指導すればいい」と話した。
一方、中央教育審議会や高大接続システム改革会議の委員として共通テストの議論に加わった荒瀬克己大谷大教授は「高校教育、大学教育との三位一体の改革として進めてきたので残念」と語り、「思考力・判断力・表現力を問うことは間違いではない。共通テストで何を測るのか、個別試験で何を求めるのか議論し、具体化していくことが重要だ」と訴えた。
駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長は「採点ミスなどによる混乱を避けられたのは、受験生や保護者にとって良かった」と評価。「国公立はほぼ全ての大学が2次試験で記述式を課しており、私大の入試改善が必要だ」と指摘し、日本私立大学連盟などが自主的に導入を進めるよう求めた。