
かんぽ生命保険の不適切販売問題で、金融庁と総務省は27日に日本郵政グループに対する行政処分を発表する。これを受け日本郵政の長門正貢社長ら3社長が記者会見し、辞意を表明する。長門氏の後任には増田寛也元総務相の起用が固まった。関係者によると、増田氏は郵政社長への就任要請を受諾。年明けに就任する。
増田氏は政府の郵政民営化委員会の委員長を務めるなど郵政問題に精通しており、不正が横行したグループの立て直しへ陣頭指揮を執る。
引責辞任するのは、長門氏のほか、かんぽ生命の植平光彦社長、日本郵便の横山邦男社長。植平氏の後任は千田哲也かんぽ生命副社長、横山氏の後任は衣川和秀日本郵政専務執行役と、いずれも旧郵政省出身者が就く。
前総務事務次官から行政処分の検討状況を聞き出していた同次官OBの鈴木康雄日本郵政上級副社長も、長門氏らとともに辞任する。役員報酬の減額も決める。かんぽ不正問題で3トップが引責辞任する事態に追い込まれた郵政グループの新体制が固まった。
行政処分では、金融庁がかんぽ生命の保険商品の営業・販売について、3カ月間停止する命令を同社と日本郵便に発動。併せて親会社の日本郵政を加えた3社に再発防止や経営責任の明確化を厳しく求める業務改善命令を出す。総務省も日本郵政と日本郵便に業務改善を命じる。
金融庁がかんぽ・郵便の2社に業務停止命令を出すのは初めて。高齢の顧客が不利益を被る契約が全国にまん延していた事態を重く見て、再発防止には業務を停止して不利益の解消や営業現場の改善に集中する必要があると判断した。対象はかんぽの保険商品の販売に限り、郵便・貯金サービスは継続する。
増田 寛也氏(ますだ・ひろや)東大法卒。77年建設省(現国土交通省)入省。95年岩手県知事、07年総務相を経て、13年から16年まで郵政民営化委員会委員長。
千田 哲也氏(せんだ・てつや)84年郵政省(現総務省)入省。11年かんぽ生命保険執行役、専務執行役などを経て19年4月副社長。59歳。
衣川 和秀氏(きぬがわ・かずひで)80年郵政省(現総務省)入省、07年かんぽ生命保険執行役、専務執行役などを経て16年6月日本郵政専務執行役。62歳。