
火曜日に国営メディアが報じたところによると、北朝鮮の金正恩総書記は、長距離ミサイルやその他の兵器が登場する軍事パレードで行った演説で、核武力を「最大速度」で強化することを宣言し、挑発を受ければ使用すると威嚇したという。
この発言は、米国や他のライバル国をけん制するための圧力を与えるべく、挑発的な兵器開発実験を継続することを示唆している。月曜日の夜に行われた今回のパレードは、金一族の権威主義的支配のバックボーンである朝鮮人民革命軍の90周年を記念するものだ。北朝鮮は現在、核開発への意欲に対し課せられた米国主導の制裁解除を求める一方、パンデミックに起因する困難に直面している。
朝鮮中央通信(KCNA)によれば、金総書記は平壌の広場で、軍隊およびパレードに集まった群衆に対し「我が国の核武力の強化と開発を目的とした取り組みを最大速度で実行し続ける」と述べたという。
「核武力の基本的な目的は戦争を抑止することだが、わが国にとって好ましくない事態が発生した場合、核武力を戦争抑止という唯一の目的に限定することはできない」と金総書記は述べた。「いかなる軍隊であれ、我々の基本的利益を侵害しようとするならば、我々の核武力を予期せぬ第2の目的のために確実に行使するほかない」
KCNAによれば、パレードでは軍隊の行進が行われ、米国本土に到達する可能性を秘めたミサイル、戦車、装甲車、大砲、複数のロケットランチャーを含む様々な最新兵器が登場したという。
金総書記はここ数ヶ月、米国に北朝鮮を核保有国として認めさせ、深刻な経済制裁を解除させるため、核を使用した瀬戸際政策を再び行っている。アナリストによれば、国連安全保障理事会がロシアによりウクライナ侵攻をめぐって分断した状態であるため、北朝鮮は兵器開発を進めるために有利な環境を利用しているという。
米国と北朝鮮の核交渉は、2019年以降停滞している。北朝鮮の軍縮措置と引き換えに実現するであろう、米国主導の制裁緩和に対する意見の相違からだ。金総書記は国際的な圧力に直面しながらも、核兵器開発と同国の悲惨な経済状況の改善を同時に行っていくという目標に固執し、自身にとって最大の命綱である核兵器を完全に放棄する意志は見せなかった。北朝鮮は今年、2017年以来の大陸間弾道ミサイルの飛行実験を含め、13回の兵器開発実験を行った。
また、2017年を最後に稼働停止していた核実験場のトンネルを北朝鮮が再建している形跡があり、おそらく核兵器の爆発に備えるためのものだとみられる。北朝鮮の公式新聞は月曜日、金総書記に対する国民の支持強化を呼びかける社説を掲載した。
「尊敬する金正恩同志は、わが党と国家、革命軍の強大さの象徴であり、その偉大な尊厳の代表だ」と、主要紙である労働新聞が報じた。「すべての幸福とバラ色の未来は、尊敬する金正恩総書記に従うことにある」
北朝鮮が最近実験を行った兵器は、韓国や日本だけでなく、米国本土を攻撃できる可能性を秘めている。米国との核交渉が難航する中、北朝鮮は過去3年間、韓国を標的とした短距離核兵器の増強に注力してきた。
金総書記が積極的に軍事を推進するのは、国内政治が原因となっている可能性もある。というのも、金総書記は政権発足から10年を迎えるにあたり、国民に示すべき目立った業績を上げていないのだ。ドナルド・トランプ前大統領との外交で、渇望されていた制裁緩和を勝ち取ることができず、新型コロナウイルス感染症の大流行により、崩壊した北朝鮮経済はさらなる打撃を受けた。そこで金総書記は昨年、北朝鮮が「史上最悪の状況」に直面していると認めざるを得なくなったのである。
AP