
ロシア政府による石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の事実上の接収方針により、日本の大手商社が保有する権益を維持できるのか不透明感が強まってきた。液化天然ガス(LNG)の安定的な調達先であるサハリン2からの供給が途絶すれば、ロシアのウクライナ侵攻で天然ガス価格が急騰する中で代替調達を進めざるを得なくなる。電気・ガス料金の高騰に拍車が掛かりそうだ。
サハリン2の運営会社サハリンエナジーには、三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資。年1000万トンのLNG生産量のうち約600万トンが日本向けで、日本全体で9%を依存するロシアからの輸入量のほぼ全量を賄う。
萩生田光一経済産業相は1日の記者会見で「直ちにサハリン2から輸入がなくなるわけではない」と説明。ただ、「今後の不測の事態に備え万全の対策を取る」とし、米国やオーストラリアからの代替調達を進める方針を示した。
長期契約のサハリン2からのLNG調達がなくなれば、代替分としてスポット市場での購入を迫られる。ただ、天然ガスをロシアに大きく依存する欧州が「脱ロシア」へかじを切る中、LNGは世界的に争奪戦が生じている。十分な量を確保できるか不透明な上、経産省によると、スポット価格は日本が結ぶ長期契約価格の約2倍に高騰しているという。
三井物産や三菱商事も、ロシア政府が提示した条件を満たせば、サハリン2が移管される新会社に出資できるとされる。だが、「対ロ制裁の緩和など見返りを求められるのではないか」(日本側関係者)との警戒は強く、権益維持は容易ではない。
時事通信