
米国が提唱する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合は9日閉幕し、日米など全14カ国が正式交渉を開始することで合意した。「サプライチェーン(供給網)」「貿易」「クリーン経済」「公正な経済」の4分野で閣僚声明を採択。米中対立を背景に経済安全保障の重要性が高まる中、半導体の供給網強化に最優先で取り組む構えだ。
IPEFはバイデン米大統領が5月に訪日した際、中国への対抗軸として発足した。韓国やインド、オーストラリアなどを含む14カ国の閣僚が一堂に会したのは初めて。日本から出席した西村康稔経済産業相は閉幕後に「自由で公正な経済秩序の形成に向けて努力していきたい」と語り、民主主義の価値観に基づく21世紀型のルールづくりを日米が主導すると表明した。
議長を務めたレモンド米商務長官は記者会見し、新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻の教訓を踏まえ、「供給網分野で早期に成果を得られる可能性があるとの見方で一致した」と語った。台湾有事もにらんだ動きとみられ、次回の閣僚級会合は早ければ年内にも開かれる見通しだ。
米国は2023年にアジア太平洋経済協力会議(APEC)の議長国を務める予定で、同年秋の開催が見込まれる首脳会議までに一定の成果を挙げたい考えだ。
最優先の供給網分野では、半導体や鉱物資源、食料を貿易相手国に対する威圧の「武器」として扱う中ロへの過度な依存から脱するため、情報共有や代替調達の体制を整え、生産拠点の分散を図る。クリーン経済は、気候変動対策として脱炭素への移行を加速。公正な経済は、法人税の二重課税や汚職を防止する制度を構築する。
IPEFは各国が関心のある分野を自由に選べる制度設計にしており、分野ごとにどれだけ多くの国が交渉入りできるかが焦点だった。閣僚声明によると、デジタル経済を含む貿易分野はインドを除く13カ国が参加する。インドは国境を越えたデータ移転を厳しく規制している。残る3分野には全14カ国が加わる。
時事通信