
政府は31日、中国湖北省武漢市を中心に感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎への対策として、過去2週間以内に湖北省に滞在していた外国人らの入国申請を拒否する方針を決めた。2月1日から実施する。世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言を受けた措置で、特定地域を指定した入国制限は初めて。同日付で新型肺炎を感染症法の「指定感染症」、検疫法の「検疫感染症」にそれぞれ指定。感染拡大防止に向け、強制入院などの取り組みを強化する。
政府は新型肺炎の対策本部会合を31日に2度開催した。安倍晋三首相は「前例にとらわれては、この前例なき危機に対応できない。柔軟かつ機動的な対応を進めてほしい」と各閣僚に指示。感染の有無にかかわらず(1)入国申請日前14日以内に湖北省滞在歴がある外国人(2)湖北省発行の中国旅券所持者―について、2月1日から「当分の間、入国を拒否する」と表明した。
指定感染症に関しては、持ち回り閣議で政令を改正し、2月7日と定めていた施行日を前倒しした。指定感染症は2014年の中東呼吸器症候群(MERS)以来、5例目。
これにより2月1日以降は出入国管理法に基づき感染者の入国拒否が可能となる。感染が確認できない場合でも「高度な政治的判断」(森雅子法相)で同法を適用する。
今後は強制入院や就業制限が可能になるほか、患者を見つけた場合の報告義務が医師に課される。入院中の治療費は公費負担となる。
検疫感染症の指定により、各地の港湾や空港の検疫所では、感染が疑われる入国者に診察や検査を強制できる。
武漢市からの帰国者の中には無症状の感染者が含まれていた。こうした感染者の発見や二次感染の防止は難しいため、強制措置の対象を拡大した。
政府がチャーターした帰国便の片道分運賃約8万円については個人に請求せず、政府が負担する方向で検討する。
首相は31日の参院予算委員会で、観光業をはじめとする日本経済への影響を注視しつつ「必要があれば予備費の使用も検討したい」と述べた
JIJI Press