林芳正外相は28日、今週末にも中国を訪問し、秦剛国務委員兼外相と会談する方向で調整に入った。政府関係者が明らかにした。沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海情勢で日本側の「懸念」を直接伝えるとともに、中国当局に今月拘束された50代の日本人男性の早期解放を求めるとみられる。
日本の外相の訪中は2019年12月以来約3年3カ月ぶりで、林氏の就任後は初めて。両外相は2月に電話会談している。
日中間では、岸田文雄首相が昨年11月の習近平国家主席との会談で「建設的かつ安定的な日中関係」の構築に向け、首脳レベルを含め緊密に意思疎通する方針で一致。外相訪中の調整を進めることで合意した。これを受け、林氏は昨年末の訪中を検討したが、中国側の事情で先延ばしとなった。
拘束された邦人男性はアステラス製薬の社員。中国側は「反スパイ法違反」などと主張し、林氏は28日の記者会見で「直接連絡が取れていない」と説明した。
日本政府は中国に対し、「課題や懸案があるからこそ主張すべきは主張して対話を重ねる」との立場を取る。会談で林氏は、尖閣周辺で常態化している中国海警船の領海侵入や、日本周辺でのロシアとの共同軍事活動に懸念を表明。台湾海峡の「平和と安定」の重要性も指摘する見通しだ。
防衛当局間のホットライン(専用電話)の早期運用開始などについても意見交換するとみられる。
時事通信