リオデジャネイロ:石破茂首相は19日(日本時間20日)、南米訪問を終え帰国の途に就いた。米中韓首脳らとの個別会談をこなし、一定の成果を得たと誇示。今後の「石破外交」展開に結び付けたい考えだが、トランプ次期米大統領との面会や、日中間の懸案は持ち越した。国内でも、少数与党として臨む国会対応など難問が山積しており、外交を軌道に乗せられるかは不透明だ。
「日本の平和を守り、インド太平洋地域の安定を一層確保し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するための首脳外交を引き続き積極的かつ意欲的に展開していきたい」。首相は19日(日本時間20日)、一連の外交日程を終えて内外記者会見に臨み、こう強調した。
首相は15、16両日にペルーでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、18、19両日にブラジルで20カ国・地域首脳会議(G20サミット)にそれぞれ初出席。ペルーでは、バイデン米大統領と会談し、日米同盟を引き続き強化する方針を共有。直後の日米韓首脳会談では、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する3カ国連携の継続で一致した。
首相はこうした成果を携え、「日米、日米韓の結束は不可欠だ」とトランプ氏に直談判する段取りを温めていたが、初会談は実現しなかった。南米からの帰途の米国での接触を模索していたが、トランプ氏側は見送りを伝達。首相にとっては誤算で、信頼関係構築に向けた戦略は練り直しを迫られた。
中国の習近平国家主席との会談は15日に行われ、首相は「かみ合った意見交換だった」と振り返った。習氏は、日本産水産物の禁輸緩和を確認した9月の日中合意を履行する意向を表明。日本政府は、トップ自らの言及を「成果」と受け止めている。ただ、輸入再開時期は示されず、邦人拘束など他の懸案でも具体的な進展はなかった。
首相は初外遊となった10月のラオス訪問に続き、今回もアジア版NATO(北大西洋条約機構)創設構想など外交面の持論は封印し、安全運転に努めた。韓国の尹錫悦大統領との会談後、首相は自身が重点政策に掲げる人口減少対策に触れ「韓国はより事情が厳しい。話し合いを深化させたい」と意欲を示した。G20サミットでは防災庁設置方針を紹介した。
首相は21日に帰国する。28日召集予定の臨時国会では予算委員会で野党との本格論戦に初めて臨む。2025年度予算編成も控え、野党の協力を引き出せるかが焦点となる。
首相は外遊中、習氏と頻繁に意思疎通する必要性を強調し、尹氏とも「いつでも話し合いの機会をつくりたい」と語った。ただ、政権基盤は衆院での与党過半数割れで脆弱(ぜいじゃく)だ。トランプ氏との初会談を含め、思惑通りに外交を展開できるかは見通せていない。
時事通信