Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

猛暑の脅威の中、中東・北アフリカ地域は積極的な対応が必要

Short Url:
03 Oct 2023 01:10:01 GMT9
03 Oct 2023 01:10:01 GMT9

世界気象機関とEUのコペルニクス気候変動サービスによると、この夏、世界は熱波に見舞われ、7月は史上最も暑い月としての記録を塗り替えた。このような異常気象が社会に与える影響を考える上で、2022年夏の猛暑はヨーロッパで6万人以上の命を奪ったことが指摘できよう。

中東・北アフリカ地域は、すでに世界で最も水不足が深刻な地域と認識されているが、近年は猛暑に悩まされており、今世紀末までには気温が大幅に上昇することが予想されている。『Lancet Planetary Health』誌が4月に発表した予測によると、中東・北アフリカ地域の暑さによる死亡者数は、人口10万人あたり123人増加し、現在の約60倍になる。温室効果ガスの高排出が世界的に続いた場合、今世紀末にはこの地域の気温が50℃に近づく可能性がある。それでも、地球温暖化が産業革命以前のレベルを2℃上回る程度に抑制できれば、予測される死者の80%を救うことができる。

熱波は、個人や社会全体に悪影響を及ぼす可能性がある。主として、人間の健康に直接的な影響を与え、熱疲労、熱中症、脱水症状、失神など、ひどく不快な病気を引き起こす。とりわけ乳幼児、高齢者、低所得者、生涯者、健康状態の悪い人などの社会的に脆弱な層には、暑さに関連した病気や死亡が起こりやすい。

さらに、極端な暑さに長時間さらされると、疲労、睡眠障害、混乱、いらつきなどを引き起こし、精神衛生上の問題を悪化させる可能性がある。配達運転手、建設労働者、農業従事者、漁師など、屋外で活動しなければならない労働者は、猛暑の影響を特に受けやすく、労働生産性全体を低下させる。その上、暑い季節には暑さに関連する患者が殺到するため、医療機関にも負担がかかる。

より大きなスケールで見ると、熱波は、農作物への被害や収穫量の減少、水不足、山火事、生物多様性への影響といったかたちで、地域の環境に被害をもたらす。食糧や水の不足、物価の高騰、家屋の損壊、干ばつシーズン、大気の質の悪化に直面するため、これらすべての要因が地域社会の健康に影響を及ぼす可能性がある。

猛暑は、道路、鉄道の線路、橋、ダム、送電線に損傷を与えやすいため、重要な都市インフラも深刻な影響を受ける。猛暑による建物の構造的損傷は、エネルギー消費と冷房の需要を増加させ、発電所に過負荷をかけ、エネルギー料金を高騰させ、温室効果ガス排出量をさらに増加させるだろう。

気候変動により中東・北アフリカ地域の熱波の頻度と激しさが増していることから、中東・北アフリカの政策立案者は、熱波に備え、その影響を緩和するための対策を積極的に実施することが極めて重要である。したがって、地域政府は、猛暑の悪影響から地域社会を守り、気候変動に直面した場合の回復力を構築するために、主要な利害関係者間の迅速な連携を確保する多面的な政策アプローチを採用する必要がある。猛暑への対策計画は、都市とその住民を管理し、混乱や被害、死者を最小限に抑えながら猛暑の季節を乗り切るための重要な一歩である。

地域政府は、主要な利害関係者間の迅速な連携を確保する多面的な政策アプローチを採用する必要がある。

サラ・アル・ムラ

備えこそが大切であるため、都市や住民に対し、さまざまな通信手段を通じて、早期に暑さ警告を発することが極めて重要である。これは、気温の傾向を追跡し、タイムリーな熱波アラートを発令し、介入の効果を評価する気象データシステムを確立することで達成できるだろう。

都市計画者は、大規模な植樹計画を開始し、樹木による都市の天蓋を生み出し、都市内に緑地帯を作り、冷房センターのような暑さをしのげる公共スペースを組み込むことで、猛暑の影響を軽減することができる。例えば、サウジアラビアは気候変動に対処するため、国内全土に100億本の木を植えることを目標に、大規模な植林プロジェクトを開始した。

水やエネルギーといった貴重な天然資源を維持するためには、政策立案者は厳しい節水政策を実施し、エネルギー効率の高いシステムを奨励する必要がある。建物は、空調、屋上緑化、壁面緑化に加え、耐熱素材や断熱材を取り入れることが不可欠だ。例えば、シンガポール・グリーン・ビルディング・マスタープランでは、エネルギー効率の高いソリューションと持続可能な建設方法の義務化により、2030年までに建物の80%を緑化することを目指している。

食料安全保障への懸念を軽減するためには、猛暑に対する脆弱性を軽減する持続可能な農法に投資することが重要である。猛暑に強い持続可能な公共交通システムへの投資も、猛暑時に実用的な移動手段を人々に提供する上で極めて重要であり、熱を発生させる自動車への依存を減らすこともできる。

猛暑到来の際には、十分な保健計画を立案し、効果的に展開することが必要だ。医療機関は、暑い季節に十分な病室、医療機器、冷却システム、バックアップ電源などを確保することが不可欠である。また、医療従事者や緊急対応者は、猛暑に関連するあらゆる緊急事態を認識し、対処できるよう訓練を受ける必要がある。

公衆衛生に対する意識向上キャンペーンを行うことで、猛暑のリスクから身を守ること、暑さに関連する病気の種類と一般的な症状、水分補給の重要性、冷却に関する戦略、屋外活動の制限方法、医療支援が必要な場合の緊急連絡先などについて、国民、特に社会的弱者に重要な情報を伝えることができる。

同時に、エネルギー料金の支払いなど、低所得者を対象とした社会支援プログラムを提供することで、熱波到来時に脆弱なグループを保護することが不可欠だ。また、暑さがピークに達する時間帯の休憩の義務化や、水・食料・涼しい場所の提供など、屋外労働者の保護に関する規制を見直すべきである。

猛暑がもたらす無数の課題には、その悪影響から地域住民を守るための積極的な政策が必要である。

  • サラ・アル・ムラ氏はアラブ首長国連邦の公務員であり、人材開発政策と児童文学に関心を寄せる。連絡先はwww.amorelicious.com
特に人気
オススメ

return to top