Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 日本
  • 日本で隔離のクルーズ船、ウイルスを培養したようなもの

日本で隔離のクルーズ船、ウイルスを培養したようなもの

18日現在で、隔離状態の乗客乗員3,711名のうち542人が、COVID-19と名づけられたこの新型ウイルスに感染していることが確認されている。これによりダイヤモンド・プリンセス号は中国以外では感染者数の最も多い場所となった。(AFP/報道資料)
18日現在で、隔離状態の乗客乗員3,711名のうち542人が、COVID-19と名づけられたこの新型ウイルスに感染していることが確認されている。これによりダイヤモンド・プリンセス号は中国以外では感染者数の最も多い場所となった。(AFP/報道資料)
Short Url:
19 Feb 2020 01:02:34 GMT9
19 Feb 2020 01:02:34 GMT9

【東京】異例にも2週間にわたりクルーズ船を隔離する日本の試みは19日、終了する。これを受け、多くの科学者が実験は失敗だったと指摘している。船は、中国発の新型ウイルスの蔓延を食い止める隔離施設となるどころか、逆に培養したようなものだ、というのだ。

中国中央部で昨年末に確認されたこのウイルスには、以来数万人が感染し、死者は1,800人を超えている。

18日現在で、隔離状態の乗客乗員3,711名のうち542人が、COVID-19と名づけられたこの新型ウイルスに感染していることが確認されている。これは中国以外では感染者数の最も多い場所となる。また、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号は、ウイルスが中国外にスムーズに拡散した唯一の事例と保健当局にみられている。

そこで疑問が生じる。なぜそんなことが起きたのか。

隔離には意味があったと日本政府は繰り返し抗弁している。が、専門家の中には緻密な対応とはとうてい言えないのでは、とする者もいる。

検疫の手続きに抜かりがあった可能性もある。これは、船内の検査に立ち会った日本の保健当局者も3人感染しているからだ。

「病気の蔓延がよりスムーズである環境もときにはある」と、WHO(世界保健機関)で健康危機対応プログラムを統括するマイケル・ライアン博士は語る。特にクルーズ船は、ときとして蔓延が加速化する場所として知られている、とも博士は語る。

「船の上で起こった不幸な出来事だ。われわれとしては、乗客らを引き取っている日本当局および政府が適切な治療を引き続きおこなえるものと信じている」

18日、日本の加藤勝信厚生労働大臣は会見で次のように語った。船内に残された乗客全員の検体採取は済んでおり、ウイルス検査が陰性となった者について、14日間の検疫期間が予定どおり終了する19日から下船が開始される。

「みなさんができるだけ早い帰宅を望んでいることから、われわれとしても全員のスムーズな帰宅を支援していきたい」と加藤氏は語った。

関わる人数が多いため、下船が完了するのは21日までかかる見通し。

キングス・カレッジ・ロンドンで疫病流行について研究するナタリー・マクダーモット博士は語る。「検疫が機能しなかったのは明白で、いまやこの船自体が感染源となっている」

ウイルス拡散の正確な機序は不明、と博士はする。専門家の間では、せきやくしゃみといった飛沫感染によって拡散するものとみられているが、感染経路にはなお別のルートもある可能性はある。

博士は語る。「船内の検疫措置はどう実施されたのか、空気濾過はどのようなものだったか、船室間の接続はどうだったか、廃棄物はどう処分されたか、これらは把握しておきたい」

「まだ知られていない感染パターンも考えられる」とする博士は、環境へのウイルス拡散の可能性を指摘。さらに、ウイルス汚染された器物表面との接触を断つため全船を「徹底清掃」することが重要だとしている。

今回の新型ウイルスとも関連のあるSARSが2002年から03年にかけて集団発生した際には、香港の集合住宅の下水施設不備から300人以上が感染している。ダイヤモンド・プリンセス号でも同様の問題があった可能性があるとマクダーモット博士は指摘する。

「検疫が適切なら機能しないはずがない」と博士。

クルーズ船にはノロウイルスの集団発生のような事例が起きることもしばしばだ。船内のような密集空間、また免疫系の弱っている老齢の乗客の間ではこうしたウイルスは急速に拡散する。が、博士によると、船全体を隔離状態に置くといった事例はきわめてまれだろう、とのことだ。

「感染者を48時間無症状が確認されるまで個室隔離するといったことはありうる。が、全乗客となると話は別だ」と博士。

ダイヤモンド・プリンセス号の乗客の中には同船を「海上監獄」と称した者もいる。が、マスクをつけながらデッキを散歩することは毎日許可されていたし、他者と距離を置くようにも指示されていた。

「考えられているほど乗客同士は隔離されていなかったのでは、と思っている」と、英イースト・アングリア大学の内科学教授ポール・ハンター博士は語る。ウイルス拡散が続く原因はコンプライアンスに問題があるからでは、と同博士は指摘する。

「船内環境で検疫を実施するのは困難だ。また、絶対に、行動の制約を受けたくないなどと言い出す者が乗客の中から現れたに決まっている」と博士は語る。乗客の検疫が陸上でおこなわれていれば、スペースにゆとりがあるため感染対策もうまくいったかもしれない、ともする。が、いずれにしろ3,700人も隔離するとなれば実行には多大の困難をともなうことも認めている。

隔離してもウイルスの蔓延を食い止められなかったことは「たいへん残念」と博士は言う。また、帰国する乗客の中には母国へ戻れば今度は二度目の隔離期間に入る者もおり、同情を禁じえない、とも語る。

博士は言う。「ウイルスの蔓延が続いたことから、下船者は全員が潜在的な感染者と想定する必要がある。であるならさらに2週間隔離するのもやむなしだ。先の不安を考えるなら、それ以外に手はない」

AP

特に人気
オススメ

return to top