
ハーグ:シリアは何万人もの国民を拷問し、「忌まわしい扱い 」を 「広範に浸透させた 」体制を続けていると国際司法裁判所の判事たちは10日、内戦を巡る初の国際裁判で審問した。
カナダとオランダはシリアを国際司法裁判所に提訴し、いまだ拘束されている数千人の虐待を止める緊急措置を求めるよう要請した。
オランダ代表のトップ、レネ・ルフェーバー氏は法廷で、「一刻を争う」と訴えた。
「現在拘束されている、あるいは拘束される危険にさらされているシリアの人々は、これ以上時間の余裕はない」とルフェーバー氏は続けた。
シリア政府は公聴会初日を欠席したが、以前からこの件を「偽情報と嘘」と断じ、疑惑は 「信ぴょう性がみじんもない」としている。
ルフェーバー氏は被収容者の身を引き裂くような証言を引用し、集団性的暴行、身体の切断、タイヤに人をねじ込み「激しく殴打」する「標準化された」懲罰方法について述べた。
カナダとオランダはICJに対し、シリアがすべての拷問と恣意的な拘束をやめ、刑務所を外部の査察官に開放し、愛する者の運命について家族に情報を提供するよう「緊急に」求めることを要請した。
ICJは判決に何年もかかることがあるが、緊急のいわゆる「暫定措置」は数週間で命じられ、法的拘束力を持つ。
「シリア人の生命と幸福が危機にひんしており、裁判所の早急な対応が必要とわれわれは心から確信している」とルフェーバー氏。
元囚人から活動家に転身したアフマド・ヘルミ氏はAFP通信に次のように語った。「私はシリアの刑務所に3年間いたが、拷問が四六時中行われていることは確かだ。拷問は24時間行われている」
「拷問は尋問のためだけではない。おもしろ半分で行うこともある。彼らはただ免罪符を享受していると感じているから、やりたい放題なのだ」
「毎月何百人もの人々が拷問で命を落としている」とヘルミ氏は公聴会前のインタビューで語った。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのBalkees Jarrahは、ICJは「悪夢のような状況で苦しみ続け、深刻な命の危険にさらされているシリア人に対するさらなる虐待を防ぐために」行動する必要があると述べた。
シリア内戦に関連した個別の戦争犯罪訴訟はいくつかの国で起きているが、国際司法の広範な計画がないことに西側諸国は長い間不満を募らせてきた。
オランダは2020年9月、シリア政府が批准している国連拷問等禁止条約に対する違反の疑いでシリアの責任を追及するため、初めて訴訟を起こした。
翌年3月、カナダも同訴訟に加わった。
ICCは、ICJと同じくハーグに本部を置く戦争犯罪裁判所であるが、シリア政府が同裁判所の設立条約であるローマ規程を批准していないため、シリアを扱うことができない。
ロシアと中国は2014年、シリア情勢をICCに付託する国連安保理決議案を阻止。
この状況は、5月にシリアのバッシャール・アサド大統領がアラブ首脳会議に出席し、国際社会に復帰したことで再び注目を集めている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この公聴会を「分水れい」と表現し、ICJの手続きがアサド政権の孤立からの復帰にスポットライトを当てることを期待した。
活動家のヘルミ氏は、「ならず者国家」シリアがICJの判決を受け入れる可能性はないとしながらも、どのような判決であれ、被害者や家族にとっては重要なことに変わりないと主張した。
「どこか地方の裁判所の話ではない。拷問が行われていると私が言うのとは違う。これは拷問が行われているとICJが言うことなのだ」と彼は言う。
「シリア政権を再び正常化させたい者は皆、四六時中人々を拷問している国家を正常化しようとしているという札を額に貼られることになる」
AFP