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中国と米国、アジアで囲まれて、または「抑え込まれて」いるのはどちらか?

北京オリンピックタワーの最上階から見た北京の街のスカイラインを撮影した写真。2020年8月25日。(AFP)
北京オリンピックタワーの最上階から見た北京の街のスカイラインを撮影した写真。2020年8月25日。(AFP)
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03 Jan 2021 08:01:09 GMT9
03 Jan 2021 08:01:09 GMT9

アンソニー・ローリー

東京:新しい年の始まりには、経済学者やアナリスト達が未来を予言してみせるのがお決まりだが、今年の予想は世界経済は新型コロナウイルスのパンデミックの影響から復活するだろうという楽観的な見解から、この世界的な危機がもたらした損害を乗り越えられる可能性の低さを憂慮する見解まで幅広い。

だが、膨大な数の予想されるシナリオの中に見当たらないのは、去年の出来事が米国と中国の間のアジアにおける経済的力関係のバランスをどこまで動かしたかということだ。同様に、欧米式市場資本主義と中国式国家資本主義の間の力のバランスもどの程度変わっただろうか。

米国のドナルド・トランプ大統領は、激動だったその任期中に米国が長年かけて注意深く築き上げてきた貿易や投資の協定をせっせと断ち切り、なかったことにしてきた。一方、中国は重要な国々と貿易など様々な協定を結び、着々と力を積み上げることに同じくらいのエネルギーを費やしてきた。

この流れは、12月30日に中国がEUと包括的投資協定(CAI)に合意したことで大きく一段階前進した。中国が14の国と包括的経済連携(RCEP)を結んだたった一ヶ月後のことだった。

ワシントンのシンクタンク、アトランティック・カウンシルのハング・トラン氏が指摘するように、「CAIに加え、RCEPと発展途上諸国との(特に「一帯一路」構想化の)貿易、投資関係の成長は、中国にとって広大で活力に満ちた経済的土壌を構成したと言える」。

国際金融協会の元エグゼクティブマネージングディレクター及び元IMF国際資本市場局次長を務めたトラン氏は、「これにより中国は、長期化する米国と西欧諸国全般との戦略的競合に直面する中、発展途上国への政治的影響力を増していくことが可能になった」と語る。

これが意味するのは、ジョー・バイデン次期大統領がトランプ政権によって米国(そして世界全体)にもたらされた損害の修復にどれほど成功したとしても、バイデン氏の任期中のアジアの経済的展望は米国よりも中国主導になる可能性が極めて高いということだ。

トランプ政権の不手際な貿易・投資政策は、おそらく後に、憂慮すべき市場経済と民主政治の衰退を速めたとして、そしてまた長期的投資戦略の必要性の十分な認識(及びそれを実行する能力)に非常に欠けていたという評価を受けるだろう。

戦略ではなく指導者の性質によって主導される政府(トランプ政権はその中でもかなりひどい例だが)は、短期間で方針をころころ変え、最終的に失敗するのが典型的だ。ちょうど、熟考型のグランドマスターに対してスピードチェスの手を仕掛けるチェスプレーヤーのように。

トランプ大統領は関税と取引制限というオープニングのギャンビットで素早くチェックメイトを決めようとしたが、結果的に自分の駒をとられることになった。そこで窮地から逃れるためにまた軽はずみな手を重ねたものの、気がつけば対戦相手に追い込まれていたというところだ。

これが現在の米国―中国間の経済における関係性(というよりも、おそらく「敵対関係」というべきだろう)を表している。アジアにおいて、米国は対戦相手の中国の駒に「追い込まれて」いる。チェスよりも碁の方が例として適当かもしれないが、どちらにしても状況はだいたいわかるだろう。

バイデン氏は中国の「脅威」に対し、「勝てない相手なら手を結べ」式のアプローチで応じるかもしれない。それはやり方によって、建設的にも破壊的にもなり得る。

政治戦略家でアトランティック・カウンシルの寄稿者でもあるグラント・T・ハリス氏がコメントしたように、「米国政府の全面的な支援なしに米国企業が中国の資金と戦術に対抗し耐えることを期待するのは茶番だ」。ハリス氏が主張するように、米国政府には「新しいアプローチが必要」だ。

新しいアプローチは劇的なものである必要がある。戦略的産業への公的支援(中国式)は確実に不可欠だろう。だが、「混合経済」において、このやり方は民間企業株主への支援として見られる可能性もある。これは、体制的、思想的ジレンマを生み出すだろう。

2020年代前半、国家資本主義と市場資本主義がぶつかり合う中、このジレンマは市場経済における議論の最大のテーマとなる可能性が高い。

気候変動対策やさらなるパンデミック防止策、インフラの構築などのプロジェクトへの大規模な投資の需要は、経済及び社会システムの長期的持続性において二つの資本主義のうちどちらがより効果的でより打たれ強いかを明らかにするだろう。

これまでの米国のアプローチは貿易・投資協定を利用して提携国の経済に「市場に適した」構造変化を構築しようと(たとえば、環太平洋戦略的経済連携協定もしくはTPPのように)いうものだった。一方、中国は主に国境を越えた交易を促進する(RCEP、そして現在はCAI)というアプローチをとってきた。

現在、米国はますます弱い立場から取引、もしくは交渉をする羽目になっている。中国の「スローチェス」式の米国関連戦略が、アジアでの経済的情勢を変化させつつあり、ゲームのルールがイデオロギーより実用主義によって定められるようになりつつあるためだ。

この点において、EUは米国と中国の間あたりの立場をとっているが、中国とのCAIに合意するという決断は、明らかに今月末に政権を握ることになっているバイデン陣営に懸念を生み出した。

バイデン政権のメンバー及びアドバイザーは、この動きを米国と中国の貿易協定に先回りして、おそらくその弱体化を狙ったものと考えている。とはいえ、トランプ政権化でぼろぼろになった中国との関係もしくは「冷戦状態」がアジアとその他の地域での経済競争の風にさらされる中、協定合意は必須だ。

EUが中国に対して米国が望むより柔軟路線に転向した(CAIにおいて中国はEUに譲歩しているにもかかわらず)ことを批判するより、バイデン政権はアジアでの米国の優位性への脅威が高まっていることを認識し、自国の体制を強化することに注力する必要があるだろう。

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