
イスタンブール:イスラエルは29日、トルコから外交官を呼び戻すと発表した。イスラエルがガザ地区の過激派組織ハマスに対して実施している軍事作戦を、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が激しく批判したことを受けたものだ。
この発表は、10年間ほぼ凍結されている政治的・経済的関係を回復するために両国が始めたばかりの努力に大打撃を与えた。
イスラエルとトルコ(圧倒的多数がイスラム教徒の国で、NATOの防衛にとっては中東の端で防波堤となっている)は昨年、相互の大使の再任で合意したばかりだった。
両国はまた、米国が支援する天然ガスパイプラインプロジェクトに関する協議を再開していたところだった。それは、今後数年間のより緊密で持続的な協力の基礎を築く可能性があるものだった。
しかし両国関係は、イスラエルがガザ地区のハマスに対して行っている報復的軍事作戦について、エルドアン大統領が批判のペースと激しさを上げ始めたことで破綻した。
10月7日、ハマス戦闘員らは奇襲攻撃を仕掛けて1400人(その大半は民間人)を殺害し、220人以上の人質を取った。
ハマス傘下のガザ保健省は、イスラエルの空爆による死者は7703人(やはり大半が民間人)で、そのうち3500人以上が子供だと発表した。
エルドアン大統領率いる親イスラム政党は28日、イスタンブールで大規模な集会を開いた。同大統領によると150万人が集まったという。
同大統領は、トルコ国旗とパレスチナの旗を振る支持者の群衆に対し、「イスラエル、あなた方は占領者だ」と糾弾した。
また、イスラエル政府は「戦争犯罪人」のようにふるまい、パレスチナ人を「全滅」させようとしていると非難した。
「もちろん、どの国にも自衛権はある。しかし今回の場合、正義はどこにあるのか。正義などない。ただガザ地区で残酷な虐殺が起きているだけだ」
エルドアン大統領がこの演説を終えた直後、イスラエルのエリ・コーヘン外相はトルコから全ての外交官を呼び戻したと述べた。
同外相は声明の中で次のように言った。「トルコによる由々しき発言を受け、同国にいる外交代表らに帰国を指示した。イスラエルとトルコの関係の再検討を実施するためだ」
イスラエルは既に今月、安全のための措置として、トルコを含む地域諸国に駐在する外交官に帰国を指示していた。
あるトルコ外交筋によると、10月19日までにイスラエルの外交官は全員トルコから出国していたという。
この外交筋は、「コーヘン外相が誰に帰国指示を出したのかは理解し難い」と語った。
しかし、コーヘン外相の声明は外交官の引き上げに新たな外交的次元を加えている。
同外相の声明は、エルドアン大統領自身が今週、「非人道的」戦争を理由にイスラエル訪問計画をキャンセルすると発表したことに続くものだ。
両国の外交関係は今や、ガザ地区への援助物資を運んでいたトルコの船舶がイスラエルに急襲され民間人10人が死亡した事件が起こった2010年のような最悪の状態にまで転落する危機にある。
エルドアン大統領は20年におよぶ在任期間を通し、パレスチナ人の権利に対する外国の有力な支持者であり続けてきた。
同大統領は28日の集会で、イスラエルは欧米諸国が中東に自分たちの権威を押し付けるために利用している「地域における手先」だと述べた。
同大統領は、「ガザ地区で行われている虐殺の背後にいる首謀者は欧米だ」と断言した。
さらに、イスラエルの同盟諸国が「十字軍戦争の雰囲気」を作り出してキリスト教徒とイスラム教徒を戦わせようとしていると非難した。
「我々の対話の呼びかけを聞いてほしい」と同大統領は言った。「公正な和平なら誰も損をしない」
エルドアン大統領の演説は、イスタンブールやその他の主要都市で、トルコの右寄りの団体やイスラム保守派団体が主催する親パレスチナデモが数日にわたり行われたことを受けたものだ。
しかし、メトロポールが今週公開した世論調査では、回答者の過半数が、この戦争に関してトルコが中立を保つか仲介役を務めようと努力することを望むと答えている。
この調査では、「ハマスを支持する」と答えたのは11.3%だった。
一方、トルコは「中立」を保つべきという回答は34.5%、仲介役を務めるべきだという回答は26.4%だった。
「イスラエルを支持する」と答えたのは僅か3.0%だった。
AFP