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フランクリー・スピーキング:イスラエルのガザに対する行為は「ジェノサイド」か

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13 Nov 2023 10:11:32 GMT9
13 Nov 2023 10:11:32 GMT9
  • 先日、OHCHRを辞任した高官は、最近の紛争におけるイスラエルの「ジェノサイド」を不問に付しているとして国連を非難した
  • クレイグ・モカイバー氏は、イスラエルのネタニヤフ首相の目的は人質救出やハマスの転覆ではなく、ガザから民間人を排除することだと指摘した

アラブニュース

ドバイ:先日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の国連高官が辞任するに伴い、国連がガザ地区の人々を見捨てており、現地でジェノサイドとアパルトヘイトが起こっているとの告発を裏付ける証拠が大量にあるにもかかわらず、対応に臆していると批判した。

アラブニュースの時事トーク番組「フランクリー・スピーキング」に出演したクレイグ・モカイバー氏は、「国連は、パレスチナにおけるイスラエルのアパルトヘイトについて公式に議論することに消極的です」と非難した。「主な国際人権機関が揃ってパレスチナで明らかにアパルトヘイトの犯罪が起こっていると判断したにもかかわらず、私が(辞任に伴う)書簡で最近提起したように、国連条約で定義されているジェノサイドの疑いがあるにもかかわらずです」

モカイバー氏は、幅広い話題に及んだインタビューの中で、自身の辞任を機にOHCHRで変わり得ること、イスラエルのロビイストが国連幹部に圧力をかけていると主張する理由、ガザ地区の人々に対する共感を高める必要性、パレスチナの民間人の虐殺を誰が止められるのかなどを語った。

11日にリヤドで開かれたアラブ・イスラム合同臨時首脳会議でも、ガザ地区の悪化する状況に国連が適切に対応していないことが批判の対象になった。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は会議冒頭に次のように述べた。「今起こっている人道上の大惨事は、(国連)安全保障理事会と国際社会が、イスラエルによる国際法、国際規範、国際人道法の言語道断の違反をやめさせられなかった結果です」

続けて皇太子は、ガザ情勢は世界の安全保障と安定に対する脅威になっており、全指導者が団結して効力のある対応で現状に立ち向かわなければならないと述べた。

ガザの人道危機に関連する問題について「フランクリー・スピーキング」司会のケイティ・ジェンセン氏に語る元国連人権高等弁務官事務所ニューヨーク事務所長のクレイグ・モカイバー氏。(ANフォト)

サウジアラビア外務大臣のファイサル・ビン・ファルハーン王子は、次のように述べた。「私たちには、国際社会、国際連合、安全保障理事会に対し、世界の平和と安定のために責任を果たすよう、考え得る限りの圧力をかける責務があります」

モカイバー氏は、OHCHRのニューヨーク事務所長を辞任した際、米国、英国と、欧州の大半の諸国がガザで行われているイスラエルの軍事攻撃に加担していると名指しで非難した。パレスチナの保健当局者によると、12日の時点でガザでは11,000人以上が殺害され、そのうち4,500人以上が子どもだという。

「ジェノサイド」は法的な用語であるにもかかわらず、現在では過度に政治的な概念として見られている。しかし、モカイバー氏は国際人権弁護士として、ガザにおけるイスラエルの行為は紛れもなくジェノサイドに該当すると断言する。

モカイバー氏は、「フランクリー・スピーキング」司会のケイティ・ジェンセン氏に対し、「第一に、私は人権弁護士としてこの問題に取り組んでいます。それは、国際人権法のジェノサイド条約に含まれる定義に基づいて仕事をしているということです。条約では、ジェノサイドの明確な定義がその構成要件と共に示されています」と説明した。

「基本的な要件は2つです。 1つ目は破壊する意図です。2つ目のいくつかの特定の行為については議論の余地がありません。つまり、大量殺戮だということです」

「肉体的な危害を含む深刻な危害が加えられていて、集団の破壊をもたらすよう企てられた生活条件が課されているということ、これも議論の余地がありません。なぜなら、私たちは誰もが、2015年以来ガザ地区で閉鎖と包囲が行われているのをよく知っているからです。それは、食料、医薬品、適切な住居、水、衛生、移動の自由、生存に必要な生活条件のすべてを制限するために企てられたことです」

モカイバー氏は続けた。「ジェノサイドを検証するときは、埃をかぶった資料を掘り起こして意図の存在を証明する記録を見つけなければならないのが普通です。本件の場合、数十年前から無罪放免の風潮が続いているために、イスラエル政府高官は、大統領も、首相も、閣僚も、軍高官も、ジェノサイドの意図を公言し、はっきりとガザ地区全土の消滅を呼びかけ、パレスチナ人の人間性を奪い、戦闘員と非戦闘員を区別しないことも明確にしています」

「首相(ベンヤミン・ネタニヤフ)でさえ、聖句を引き合いに、女性、男性、子ども、乳児や家畜を問わず、すべての人々を容赦なく絶滅させようと呼びかけています。この聖句を引用したことは、(ジェノサイド条約に)具体的に列挙されている数々の行為が行われ、ジェノサイドの意図がある事実を(明確に)示しています」

「この意図のもと、古くは1948年から民族粛清が繰り返されてきた文脈から考えれば、今起こっているのは証拠を必要としないほど極めて明らかなジェノサイドの事例です」

モカイバー氏は、ガザのパレスチナ民間人が、15年以上前にハマスに投票し、党の転覆を拒んだことで、ハマスによる10月7日のイスラエル南部の攻撃に加担したのだとする批判にも言及した。それは「ある種のジェノサイド的なレトリックが政府関係者のみならず一般の人々の意識にも浸透している証拠」だという。

「ガザに限って言えば、230万人の民間人が天井のない監獄に密集しているのもそうです。この人々は文字どおりその地区に閉じ込められていて、出入りもできず、適切な食料、水、住居、水の衛生設備など、まともな生活のためのあらゆる必需品をたびたび拒否されています」

そして、1990年代にガザでパレスチナの人々と共に生活した経験を語り、現在包囲されているその飛び地について、「私がこれまで暮らした中でもとりわけ素晴らしい場所でした。そう思えたのは現地の状況ではなく、出会った人たちのおかげです」と述べた。

モカイバー氏は、幅広い話題に及んだインタビューの中で、先日、国連人権高等弁務官事務所を辞任したことについて語った。国連がガザ地区の人々を見捨てており、現地で起こっているジェノサイドとアパルトヘイトへの対応に臆していると批判した。(ANフォト)

「メディアや政治家が描くイメージは、パレスチナの人々の現実を捉えていません。パレスチナ人の子ども、女性、男性、祖母、祖父の目を見ることができるなら、彼らを人として知り、自分と同じように笑い、泣き、 恋に落ち、パーティーを開くなど自分の家族と同じようなことをすると知っているならわかるはずです」

「パレスチナの人々が人間であることを知るなら、多くの政府が選ぶようなジェノサイド的な政策の追求は不可能になります。彼らを『他者』として退けることは不可能になります。彼らは『他者』ではなく、『私たち』です。彼らはあなたたちです。人権の活動にかかわっていると、共に働く世界中の人々に強い連帯を覚えます」

「毎日彼らを知り、彼らの微笑み、涙、笑いを目にすること。そのコミュニティーの人々を愛すれば、変化は起こります。もっと知らなければなりません。今、話をしているこの瞬間にも、子ども、女性、男性が、骨折し、皮膚が焼けた状態で酸素の薄い瓦礫の下に埋もれ、その上の人たちが素手で掘り出そうとする中、徐々に、耐え難い死を迎えていることを。それが事実であることを」

イスラエル軍の攻撃は「ハマスに対する闘いではない」とモカイバー氏は訴え、ガザの人々は「数字や統計ではない」と述べた。

「これは、世界のよく知らない場所に住む野蛮な群れではありません。人間です。あなたと私です。非人間化で済ませるのではなく、キリスト教徒もイスラム教徒もユダヤ教徒も、すべての人を対等な人間として考えるようになれば、そのとき解決策は見つかるでしょう」

モカイバー氏は、ネタニヤフ首相の目的はハマスの排除ではなく、ガザから民間人を排除することだと指摘した。それは教科書どおりのジェノサイドに当てはまる。

「ネタニヤフ首相には、そもそもハマスが存在する原因になった違反行為の責任があります。(しかし)現時点で首相の動機は人質救出ではないのは明らかです。人質が暮らしている場所に爆弾を落としているからです」

またモカイバー氏は、ガザにおけるイスラエル軍の行動に言及し、「彼らがやっていることは大規模な破壊と虐殺であり、ハマスとの闘いだけが目的ではないのは明確です」と述べた。

「今ガザで起こっていることは、パレスチナに残されたガザという地域を一掃しようとする動きです。その大部分は爆撃され、それ以外の地域は住めなくなります。被害を逃れたパレスチナ人が生き延びるためにラファ検問所に向かい、シナイ半島に消え去ればいい、あるいはパレスチナ人のディアスポラに入ればいいと考えているのです。そうすれば、歴史的なパレスチナの占領がついに完了するというわけです」

モカイバー氏はさらに、米国や英国などの国々は、イスラエルに資金、武器、諜報、外交的庇護を供与することでパレスチナ危機における国際人道法の義務に違反しているため、その行為に対して法的責任を問われる可能性があると主張する。

2023年11月12日、イスラエル南部のガザ地区国境沿いから撮影された写真。パレスチナの飛び地に対するイスラエル軍の砲撃で噴煙が上がる様子が写っている。(AFP)

「米国と英国はこれらの国際条約の締約国です。両国が、国際人道法、国際人権法に拘束されるのは明らかです。まず、ジュネーヴ諸条約は、自らの行動においてのみならず、全締約国が、影響力を及ぼす対象の他者、この場合はイスラエルに対しても条約を尊重するよう求めています」

「米国や英国などは、この状況を阻止するために必要な対応を怠ってきたばかりか、実際には積極的に加担してきました。例えば米国は、資金、武器、諜報支援、外交的庇護を供与し、さらに安全保障理事会で拒否権さえ行使しています」

「それは人道法の義務に違反する直接的な共犯行為です。条約で定義されているジェノサイド罪には、ジェノサイドの行為、ジェノサイドの未遂、ジェノサイドの扇動、ジェノサイドの共謀、ジェノサイドへの加担が含まれます」

「これらの行為が起こっている間でさえ積極的な支援が続いているということで、直接関与した米国、英国などの国家は、その行為に対して法的責任を負います。その国々がやるべきは、外交でもそれ以外でもあらゆる影響力を行使して、今の状況を阻止することです。(イスラエル政府に対する)武器供与、資金提供、諜報活動の支援、外交的庇護の停止などが該当します。それが義務であり、その結果、人命が救われ、人間の尊厳が守られるのです」

パレスチナ人の権利が無視されているとの懸念を明確に示していたにもかかわらず、辞任までにこれほど時間がかかったのはなぜかとの質問に対し、モカイバー氏は、「ヨルダン川西岸地区の民間人に対する軍事攻撃やハワラのイスラエル人入植者によるポグロムなど、ヨルダン川西岸地区で続くイスラエルの残虐行為」を受けて、3月に自身とOHCHRとの間で対話が始まったことを説明した。

「その時点で、私は公の場やソーシャルメディアでこれらの違反について相当に公に語っていました。一方の国連は、この問題に対してもっと慎重で、不適切なほど消極的なアプローチをとっていました」

「私は32年間、世界各国の人権状況について訴え続けてきて、この問題について公の場で特に力を入れて語ってきました。しかし、この件に関して起こったことは、イスラエルのロビー団体のグループによる組織的なキャンペーンでした。ソーシャルメディア上で私を中傷し、国連に抗議文を提出し、私を罰しようとしたのです。私が国連人権高等弁務官事務所職員であり、人権侵害について発言するのが仕事であるにもかかわらずです」

「そのため、国連側はさらに怯え、私にこれらの問題について語らせまいとする空気が生まれました。もちろん、私は黙ることはできませんでした」

「その結果、すでに3月には、このような強国への服従が国連の規範や基準の原則的な適用の効果を損ねているという考えを記しています。というのも、批判は西側諸国やロビー団体からも寄せられていたからです。そして私たちはこれらの問題に対して立ち向かう必要があり、恐れて沈黙してはならないと指摘し、もっと大きな声を上げようと勧めました」

10月7日のガザ地区のパレスチナ武装勢力による攻撃を受けて行われた遺骨の捜索から帰還するイスラエル軍兵士。11月12日、イスラエル南部との国境付近にて。(AFP)

二国家解決を求める多くの政治家とは対照的に、モカイバー氏は、歴史的パレスチナ全域に、キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒が同等の権利を持つ単一の民主的世俗国家を築くことを世界は支持しなければならないと考えている。

同様の提唱をした政治家として知られているのは、リビアの指導者だった故ムアンマル・カダフィ氏だけだ指摘すると、モカイバー氏は、「長い、長い間、それが私たちの基準に合致すると考える人権コミュニティの人々を含め」、同じことを要求してきた公人は世界中に大勢いると答えた。

単一国家の解決策が型破りだと考えたことはない理由について、モカイバー氏は次のように説明した。「興味深いのは、世界中のあらゆる状況において、国際社会はそこにいるすべての人々の平等を基礎とした解決を求めていることです。国際人権基準の適用に関わるすべての人に平等な権利を与える民主的な世俗国家の建国を呼びかけています」

「その一貫性に関してある種の口封じがなされているのは、今の特別な状況についてだけです。ですから、単一国家の解決策はごく普通の反応です。ただ、この問題の場合のみ、適用に制約があるのです。現実には、事実上すでにひとつの国家が存在しています。つまり、イスラエルの歴史的パレスチナ全域がイスラエル政府に支配されています。ヨルダン川西岸地区とガザには、第2の国家として現実的で持続可能なパレスチナ国家を築く余地は残っていません」

「たとえその方針を採用するとしても、中心的な人権問題の解決にはなりません。グリーンラインの内側のパレスチナ人は依然として二級市民であり、帰還する権利がないなど、理由はいくつもあります。二国家解決がその答えになることはありませんでした。そして問題は、私たちがここ以外のあらゆる場所で平等を求めるのなら、この場合で言えば、キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒の平等の権利を要求するのなら、なぜイスラエルとパレスチナの場合にはそれを要求しないのかということです」

モカイバー氏は、単一国家の樹立を主張することは事実上、イスラエルのユダヤ人国家の地位の終焉を求めるものであるという考え方、つまり約75年前にイスラエル建国の基礎になった実存的理念を断固拒否した。

「ネタニヤフ政権はジェノサイドを止めることにさえ同意していません。彼らとは話になりません」

「求めているのは、イスラエルの終焉ではなく、イスラエルとパレスチナの救済です。アパルトヘイトの終焉と入植者による植民地主義の終焉です。保護されるべきすべての人々に平等な権利を与える民主的な世俗国家を要望する国連の規範と基準を受け入れることを呼びかけています」

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