
ドバイ: 米国防当局筋によると、ガザ地区でのイスラエルとハマスの戦闘を背景に、イスラエルの富豪が所有するコンテナ船が25日、インド洋でイランの無人機からとみられる攻撃を受けた。
戦闘休止によってハマスとイスラエルとの間でパレスチナ人捕虜と人質の交換が行われているにもかかわらず25日に起きたCMA CGM社が運航するシミ号への攻撃は、ガザ地区での数週間に及ぶ戦闘が、国際船舶をさらに標的とするより広い地域の紛争発へと発展する恐れを示すこととなった。
米国防当局者が諜報機関に関わる内容のため匿名を条件にAP通信に語ったところでは、マルタ船籍の船が、国際水域で爆弾を搭載した三角形のシャヘド136型無人偵察機からの攻撃を受けた疑いがもたれているとのことである。ドローンは爆発し、船に損傷を与えたものの、乗組員にけがはなかった。米国防当局は引き続き状況を注視しているとのことであるが、今回の攻撃にイランが関与しているとの理由については明らかにしなかった。
イランが支援するレバノンの過激派組織ヒズボラと政治的に同調している汎アラブ衛星放送局のアル・マヤディーンは匿名の情報源からとして、イスラエルの船舶がインド洋で攻撃を受けたと報じており、後にイランのメディアもこれを引用している。
シミ号を運行するフランスのマルセイユを拠点とする大手船会社CMA CGMにコメントを求めたが、直ちに回答は得られず、脅威に直面しているとみられる同船の対応に追われているようであった。
AP通信が分析したMarineTraffic.comのデータによると、同船は21日にドバイのジェベルアリ港を出港した時から、海洋を航行する大型船舶を追跡する自動船舶識別装置(AIS)をオフにしていた。安全上の理由から船舶はAISをオンにしておくことになっているが、船が標的にされる可能性がある場合、乗組員はAISをオフにする。イランを後ろ盾とする反政府勢力のフーシ派の本拠地であるイエメン近海を通過して紅海を航行する際にも同船はAISをオフにしていた。
「シミ号は、イースタン・パシフィック・シッピング社を介してイスラエルと関連があることから、攻撃の標的にされた可能性が高い。同船のAISは事件の数日前からオフになっていたが、これだけでは攻撃を防ぐことはできないことを示している」と、海上警備会社のアンブレイはAP通信に語った。
シミ号はシンガポールを拠点とするイースタン・パシフィック・シッピング社が所有しており、同社のオーナーはイスラエルの大富豪イダン・オーファー氏である。シンガポールのイースタン・パシフィック・シッピング社にE メールでコメントを求めたものの回答は得られず、25日は電話が不通となっていた。また、イスラエル軍もコメントの要請には応じなかった。
2022年11月、同じくイースタン・パシフィックに所属するリベリア船籍の石油タンカーパシフィック・ジルコン号が、オマーン沖でイランによるとみられる攻撃で被害を受けている。
イランの国連代表部はコメントの要請に応じなかった。しかし、イランとイスラエルは長年にわたって中東の広い範囲で武力衝突を繰り広げており、この地域を航行するイスラエル関連の船舶を標的にしたドローン攻撃も何回かあった。
10月7日のハマスの攻撃をきっかけに始まったガザ地区でのイスラエルとハマスの戦闘を背景に、フーシ派がイエメン沖の紅海で車両輸送船を拿捕し、イラクではイランが支援する民兵組織がイラクとシリアの米軍への攻撃を開始した。しかし、イラン自身が直接攻撃と結びつくことはまだない。
AP