

ハーン・ユーニス: ガザ地区に住むイブラヒム・カニンチさんは、照明弾や爆発ではなく月明かりに照らされた夜空の下、一部破壊された自宅の外で小さなたき火の側に座り、段ボールの切れ端を焚べながらお茶を飲むためのお湯を沸かしていた。
イスラエルとハマスの間の戦闘一時休止から2日目の夜のこの平和な風景は10月7日の戦闘開始以降、他のガザ地区住民らと同様、恐怖と苦難に耐えてきたカニンチさんにとって束の間の休息であり、静かに思いを巡らすひとときであった。
「この戦闘休止のおかげで私たちは穏やかな日々を過ごしおり、折を見ては、お茶を入れている。住民たちは社交的なコミュニケーションを少しばかりとれるようになり、家族や友人の安否や、自宅の様子を確認することができる」と、語る彼の顔は、炎の暖かい光に照らされていた。
「私たちは穏やかな日々を過ごしおり、折を見ては、お茶を入れている」。
イブラヒム・カニンチ – ガザ地区住民
カニンチさんは、ガザ地区南部の町ハーン・ユーニスに住んでおり、そこでは、ガザ地区北部での激しい砲撃から避難してきた数万の人々が、テントや学校、住民の家などに身を寄せて暮らしている。
しかし、イスラエルの空爆は南部でも数多くの標的を攻撃しており、カニンチさんは、絶え間ない恐怖と戦闘機や爆発音のせいで、戦闘休止が発効するまでは、家の屋内外を問わず、静かな夜を過ごすことはできなかったと語った。
彼は恐怖と爆音からの束の間の解放を楽しんでいるが、自宅は空爆で大きな被害を受け、依然平常とはほど遠い状況である。
カニンチさんは、この紛争が前の世代の暮らしぶりを復活させたとつぶやき、こう述べた。
「皆が集まって焚き火を囲むようなことは、何年も前になくなってしまったが、今私達が現在経験している戦争という例外的な状況が、私たちの祖先の頃のかつての伝統や社会文化の一部を蘇えらせた」
遠くからかすかに祈りへの呼びかけが聞こえる中、我々の近くでは自転車を押す男性と赤ん坊を抱いた女性が、暗い道を並んで散策していた。通り過ぎる車のヘッドライトが、路上の瓦礫の山や壁の落書きを一瞬照らした。
イスラエルの軍事作戦はガザ地区北部の大部分を破壊し、何十万もの人々を強制退避させ、厳重な封鎖によって食料、水、医薬品、電気、その他の物資が不足している。
「私達は、『次はどうなるのだろうか?』と自問自答している。電気も水もなく、人間の基本的な生活必需品はすべて不足している。人々が自分達の暮らしを取り戻し、安全、平和、繁栄が再び訪れるよう神に祈っている」と、カニンチさんは語った。
ロイター