
ロンドン:南アフリカは、12月29日、国連の国際司法裁判所に、ガザ地区におけるパレスチナ人に対する大量虐殺によりイスラエルを提訴し、イスラエルにガザ地区にへの攻撃の中止を命じるよう求めた。
南アフリカの国際司法裁判所への提出書類には、広範な意味における国民や人種、民族集団としてのパレスチナ人の一部である「ガザ地区のパレスチナ人を壊滅させる」という意図による「イスラエルの作為的・不作為的行為は…大量虐殺的な性質を帯びている」との主張が為されている。
南アフリカは、イスラエルによるガザ地区での軍事作戦を激しく批判してきた。シリル・ラマポーザ大統領を初めとする南アフリカの数多くの人々は、ガザ地区やヨルダン川西岸地区のパレスチナ人に対するイスラエルの政策を、過去の南アフリカの人種隔離政策「アパルトヘイト」と同一視している。
南アフリカは、ハーグに本部を置く国際司法裁判所に、ガザ地区における軍事作戦を即時停止する暫定命令をイスラエルに出すよう求めた。この要請に対する審問は数日か数週間以内に行われると見られる。訴訟が進んだとしても結審までには数年を要すると見られるが、暫定命令は数週間以内に出され得る。
南アフリカの提出書類は、ホロコーストを契機として作成された、民族全体または一部を壊滅させようとすることを犯罪とした条約にイスラエルが違反していると申し立てている。
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国際司法裁判所に、ガザでの軍事作戦を停止するよう命じる仮処分(または短期的な措置)をイスラエルに対して行うよう南アフリカの提出書類は求めている。同書類は、そうした仮処分が「現状において、パレスチナ人民の権利に対するさらなる深刻かつ回復不可能な侵害を防ぐために必要」であると述べている。
審問の日程は決定していない。
ハーグに本部を置く国際司法裁判所は国連の最高裁判所と見なされているものの、その判決は無視されることもある。国際司法裁判所は、2023年3月に、ロシアにウクライナへの敵対行為を中止するよう命じたが、ロシアはこの義務的な判決に逆らって攻撃を強行している。
イスラエル外務省は、12月29日、南アフリカの提訴について、「嫌悪感と共に一蹴する」と述べた。
イスラエル外務省のリオル・ハヤット報道官は、「イスラエルは南アフリカが流布している『血の中傷』とその提訴を嫌悪感と共に拒否します」とX(旧ツイッター)に投稿した。
「南アフリカの主張は、事実関係上の、また、法的な根拠を欠いており、国際司法裁判所を侮り、同裁判所を卑劣に利用しようとするものです」
ハヤット報道官は、ハマス運動に言及し、「テロ組織に強力している」として南アフリカを非難した。
ハヤット報道官は、また、そのX投稿で、イスラエルは国際法に従って行動しており、ハマスに対してのみ武力行使を行っているとし、ガザ地区の住民は敵ではないと付言した。さらに、この投稿で、同報道官は、民間への被害を最小限とし、人道支援物資のガザ地区内への搬入を可能とする措置を講じると確言した。
南アフリカとイスラエルの両国はジェノサイド条約の締約国であるため、南アフリカはこの条約に基づいた提訴を行うことが可能である。
この提訴により停戦が実現するか否かは、依然として不明である。国際司法裁判所の命令は法的拘束力を有しいるが、常に順守されるわけではない。
南アフリカ外務省は、声明を発表し、南アフリカは「無差別な武力行使と住民の強制移動により、現在のイスラエルによるガザ地区への攻撃に巻き込まれている民間人の窮状を深刻に懸念しています」と述べた。
「人道に対する罪や戦争犯罪などの国際的犯罪が継続的に行われているとの報告や、1948年の『集団殺害罪の防止および処罰に関する条約』で定義されている大量虐殺または関連犯罪の基準を満たす行為の報告があり、それが現時点でもガザ地区において大量虐殺の文脈で行われている可能性があります」と、南アフリカ外務省は付言した。
この戦争は、イスラム主義組織ハマスが境界線を越えて襲撃を行い1,200人を殺害し、(イスラエル側の集計では)240人を拉致し人質とした10月7日に始まった。イスラエルは、返報として、ハマスの支配下にあるガザ地区を攻撃し、(パレスチナ側の保健当局によれば)21,000人以上を殺害した。
「イスラエルは、2023年10月7日以来、大量虐殺の阻止に失敗し、また、大量虐殺への直接的かつ公的な扇動の訴追にも失敗しています」と、南アフリカの国際関係協力省は声明で述べた。
南アフリカ大統領は、以前に、戦争犯罪と「大量虐殺に等しい」行為によりイスラエルを非難していた。そして、南アフリカは11月、同じくハーグに本部を置く国際刑事裁判所に対して、ガザ地区におけるイスラエルの行為の調査を行うよう要請していた。
国際刑事裁判所は、戦争犯罪や人道に対する罪、大量虐殺の罪で個人を訴追し、国際司法裁判所は国家間の紛争の解決を図る。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのバルキス・ジャラ国際司法副部長は、南アフリカによる提訴は、「1948年の虐殺条約を用いて、ガザ地区におけるイスラエルの行為を詳細に調査する重要な機会を国際司法裁判所に提供します」と語った。南アフリカは国連の最高司法機関に対して、「イスラエルがパレスチナの人々を対象として大量虐殺を行っているのか否かについて明確かつ決定的な回答をすることを求めているわけです」と、ジャラ副部長は述べた。
ジャラ副部長は、国際司法裁判所への提訴は「加害者とされる個人に対する刑事訴訟ではなく、別の機関である国際刑事裁判所が関与することもありません。しかし、国際司法裁判所での訴訟は、国際刑事裁判所やその他の信頼に足る司法の場における公平な正義の実現への国際的な支援を促進するはずです」
AP、ロイター、AFP