
ダボス:レバノンのナジーブ・ミカティ暫定首相は16日、最近のイスラエルによるレバノン国内への攻撃と、現在も続いているガザでの敵対行為について、これらは地域に2つの可能性を提示していると述べた。ウィンウィンか、ルーズルーズである。
ダボスで開催中の世界経済フォーラム(WEF)でアラブニュースのインタビューに応じたミカティ氏は、この地域は、重なり合う多くの危機を外交的に解決するか、それとも大きくエスカレートさせるかの厳しい選択に直面していると述べた。
「我々は今日、2つの解決策に直面している。ウィンウィンか、ルーズルーズだ」と彼は語った。「ルーズルーズのシナリオでは、地域全体で戦争が宣言されることになる。ウィンウィンのシナリオは、外交的解決が必要となる」
レバノンの金融危機が始まった2019年以来初めて同国はこの年次総会へ参加する。レバノン代表団を率いるミカティ氏は、自国はこの地域を費用のかかる戦争に引きずり込むことを避けるための外交的解決策を支持すると述べた。
「ガザで戦争が勃発して以来、我々は停戦を求めてきた。それは、潜在的な解決策の基礎として必要なことだ」
「ガザでの停戦が成立した場合、我々は国連決議第1701号に従い、南レバノンでの持続的かつ恒久的な安定を目指した解決策を探求するだろう。同決議は完全に適用されなければならない」
国連安保理決議第1701号は、2006年のイスラエルとレバノンのヒズボラ民兵との戦争を終結させた。しかし、10月7日にガザで戦争が始まって以来、イスラエル軍とヒズボラ戦闘員は双方の国境付近で銃撃戦を繰り広げている。
「我々が最も恐れているのは、こうした違反行為が戦争につながることだ。それは長期にわたり、すべての当事者にとって壊滅的なものになる」
ナジーブ・ミカティ、レバノン暫定首相
ミカティ氏は11月、ガザ和平に至る3段階の計画を提案した。最初の段階は敵対行為の5日間の停止である。
この一時停止の間に、ハマスが10月7日のイスラエル南部への攻撃で拉致した人質の一部を解放し、イスラエルはガザに、より多くの人道支援を許可することになる。パレスチナ市民は数カ月に及ぶ包囲に耐えてきた。
一方、世界の指導者たちは、何十年も続くイスラエルとパレスチナの紛争を恒久的な二国家解決を実現するための国際会議の開催に向けて動き始めるだろう。
しかし、イスラエルはガザでの軍事作戦を止めることには消極的だ。代わりに、レバノンにいるハマスとヒズボラの司令官に対する精密空爆を行うなど、その軍事行動の範囲を拡大しているように見える。
ハマスの政治局副局長であり、武装組織カッサム旅団の創設者であるサレハ・アル・アルーリ氏は1月2日、ベイルートのヒズボラ支配地域のアパートで、数人の部下とともにイスラエル軍のものと疑われる攻撃により死亡した。
次いで1月8日、ヒズボラのラドワン部隊の副隊長ウィサム・アル・タウィル氏も、レバノン南部の町キルベト・セルムで、同じくイスラエルによるものと疑われている、車両へのドローン攻撃により殺害された。
翌日1月9日には、レバノン南部のヒズボラ空中部隊の司令官アリ・フセイン・ブルジ氏もまた、キルベト・セルムでイスラエルによるものと思われる空爆により死亡した。
レバノン国内での殺害は、エスカレートの脅威をさらに強めるだけである。国境付近でのミサイルの応酬やドローンによる攻撃は激化の一途をたどっている。
レバノン環境省によると、イスラエル軍の砲撃によって462ヘクタールの農地や森林が焼失し、イスラエルとの国境に近い南部の村々から避難が始まっている。
イスラエル側も同様に、国境付近の市民は、10月7日のハマスの攻撃と似た攻撃を恐れ、移動している。
アムネスティ・インターナショナルの報告書は、10月10日から16日にかけて、「イスラエル軍がレバノン南部国境沿いにおける軍事作戦で、焼夷弾である白リンを含む砲弾を発射した」ことを確認している。
さらに、ヒューマン・ライツ・ウォッチが10月に検証したビデオによれば、イスラエルは10月10日と11日に、それぞれレバノン南部とガザにおける軍事作戦で白リン弾を使用していたという。
同監視団体は10月12日、これらの攻撃は民間人に「深刻かつ長期的な負傷のリスク」を与えていると述べた。
レバノンは1月9日、国連安全保障理事会に対し、イスラエルによる白リンを含む禁止兵器の使用、および、決議1701への違反に関する正式な申し立てを行った。
国際人道法は、人口密集地やその付近、またインフラを対象にした白リンの使用を禁じている。
この焼夷性の物質は非常に高温で燃焼し、しばしば火災を引き起こし拡大させる。その効果はリンが燃焼しきるまで続く。
白リンにさらされた人々は、呼吸器障害、臓器不全、その他、生活に影響を及ぼすようなけがを負う可能性がある。この物質による火傷は治療が非常に困難であり、身体の10%に影響が及ぶだけで致命的となる。
「我々は、使用された兵器の種類、およびイスラエルによるその他の違反行為について国連に申し立てを行った」とミカティ氏はアラブニュースに語った。「我々が最も恐れているのは、こうした違反行為が戦争につながることだ。それは長期にわたり、すべての当事者にとって壊滅的なものになる」
レバノンは国連安全保障理事会に対し、ハマスの指導者アル・アルーリ氏の標的型暗殺の疑惑を含め、イスラエルに対するさらなる申し立てを行っている。
イスラエルとヒズボラの間で全面戦争が勃発した場合、レバノンの多くの人々は、少なくとも1100人のレバノン人の死者を出し、ラフィク・ハリーリ国際空港を含む民間インフラに深刻な被害を与えた2006年の紛争よりもはるかに壊滅的な打撃を受けるだろうと懸念している。
2019年以降、レバノンはさまざまな政治的・経済的危機に直面し、人口の約80%が貧困に追い込まれている。同国の金融危機は、1850年代以降で世界最悪のものと見なされている。
しかし、レバノン政府は、国の経済問題の根本原因に対処するために国際通貨基金(IMF)が求める重要な改革を実施できていない。
また、議会は2022年10月以来、新大統領の選出に何度も失敗しており、昨年6月には12回目の選挙の試みが失敗に終わった。
「大統領選挙が行われないまま14カ月以上が経過している」とミカティ氏はアラブニュースに語り、「レバノンのすべての政治団体が、このプロセスを加速するために必要なレベルの意識を示すことを望む」と付け加えた。
しかし、地域的緊張を踏まえて、ミカティ氏は短期的な進展については懐疑的な様子を見せた。「現在、レバノン共和国の大統領を選出することは最優先事項だが、新たな動きが発生している」と彼は述べた。
「これは、この地域が直面する厳しい状況の中で特に重要である」