ヨルダン川西岸地区ラマッラー:治安部隊の監視下で批判の声を上げた活動家の死を発端とする抗議活動に新たな勢いをつけようと、10日に数百人のパレスチナ人がヨルダン川西岸地区の都市ラマッラーに集結し、マフムード・アッバース大統領に反対するデモ活動を実施した。
1週間前にもパレスチナ治安部隊と私服隊員が、同様の抗議活動を暴力的に鎮圧しており、米国と国連人権理事会議長が懸念を表明している。
10日の件については、これまでのところ暴力の報告はない。
パレスチナ自治政府は1990年代に和平プロセスの一環として設立され、イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸地区の各地を統治している。自治政府は次第に独裁化して不人気となり、今年4月に15年ぶりに実施されるはずであった選挙で亀裂の入った自派ファハタ党の惨敗が予想されたため、アッバース大統領はこれを中止した。また、5月のガザ紛争の際には、ガザ地区を制圧するライバル民兵組織のハマスへの支持が一挙に高まり、アッバース大統領はほぼ脇へ追いやられていた。
10日のデモ活動は、パレスチナ自治政府が本部を置くラマッラー市中心街のアルマナラ広場に、数百人の抗議者たちが集結して始まった。先月にその死がデモ抗議活動のきっかけとなった活動家ニザール・バナート氏の母親を始めとする遺族らが、拍手で迎えられ、短いスピーチを行った。
群衆はその後、中心街を行進して周りながら人々を集めていき、やがて数千人が、「民衆は政権交代を望んでいる」、「アッバースよ、去れ」など、2011年に中東を席巻した「アラブの春」と言われる抗議運動で使われたスローガンを叫ぶまでに至った。
当初は治安部隊の姿は見えなかったが、抗議者たちがパレスチナ自治政府の本部へと続く幹線道路を行進していくと、機動隊が人員を配置してバリケードを設置している列に差し掛かった。抗議者たちは数メートル離れたところで立ち止まり、路上に座り込んだ。
一方で、ファタハ党はヨルダン川西岸地区南のヘブロン市で集会を開き、支持者たちが党を象徴する黄色の旗を振った。パレスチナ自治政府の公式放送局であるパレスチナテレビは、ヘブロンでの集会の様子を報道したのみで、ラマッラーでの抗議活動は取り上げなかった。
米国務省のネッド・プライス報道官は今週、米国は、先週末に実施されたデモ抗議活動の最中に「パレスチナ自治政府治安部隊の私服隊員が、抗議者やジャーナリストたちを攻撃して武力を行使したことを深く憂慮している」と発表した。
国連人権高等弁務官のミシェル・バチェレ氏は8日、パレスチナ治安部隊は抗議者たちを警棒で殴りつけたり、催涙ガスやスタングレネードで攻撃したりしていると発表した。また、治安部隊は女性の抗議者や記者や見物人を標的にしており、彼女たちの多くが性的なハラスメントを受けたことを報告していると述べた。
バチェレ高等弁務官はパレスチナ自治政府に対し、「意見、表現、平和的集会の自由を保障するように」と呼び掛けた。
AP