• フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、中東地域の不安定な状勢の拡大や激化を回避するためフランスは米国主導のフーシ派への攻撃には参加しないことを選択したと記者会見で述べた
• サウジアラビアの外相は、フーシ派による商船に対する攻撃とガザ戦争との関連性を強調した

ワシントン / ダボス：紅海でギリシャ所有の船舶にミサイルが命中したことを受け、米軍は1月16日、イエメンのフーシ派支配地域内で同民兵組織が保有する対艦弾道ミサイルを標的とした攻撃を新たに行った。

フーシ派の攻撃による紅海経由の輸送が混乱を来たし、その貿易への影響についての懸念が高まる中、欧州の消費財の価格が特に上昇することになるだろうと港湾・貨物輸送企業DPワールドの幹部社員は語った。

イランと同盟関係にあるフーシ派民兵組織は、そのイエメン国内の拠点への米国と英国の攻撃に対する返報として紅海上での攻撃を米国の船舶にも拡大するとの脅迫を発している。

2023年11月以来、紅海を航行する船舶に対するフーシ派の攻撃は、民間企業の商業活動に悪影響を与えている。また、このフーシ派の動きは、ガザ地区で3ヶ月以上に及ぶイスラエルとパレスチナの武装組織ハマスとの戦争の拡大であることから、大国には警戒感を抱かせている。フーシ派は、パレスチナ人との連帯感を持って商船を攻撃しているのだと主張している。

米政権は、1月16日に米国が追加的な攻撃を行い、フーシ派が発射準備を終えた弾道ミサイルを破壊したと発表した。米政府関係者の談話としてロイター通信が既に報じた、新たな攻撃が対艦ミサイル4機に対して行われたことが裏付けられた。この攻撃についての公式発表はこれまで無かった。

「米国はこうした攻撃を拡大する意図はありません。フーシ派には選択の余地があります。見境のない攻撃を中止するという正しい選択を行う時間はまだあるのです」と、米国の国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は語った。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、中東地域の不安定な状勢の拡大や激化を回避するためフランスは米国主導のフーシ派への攻撃には参加しないことを選択したと記者会見で述べた。マクロン大統領は、フランスは紅海において「防禦的」アプローチを取っており、この姿勢を堅持していく方向であると語った。

ダボスで開催された世界経済フォーラム（WEF）に出席した国際銀行グループの代表2人は、紅海危機がインフレ圧力を引き起こし、最終的に利下げの遅延や逆転を招きかねず、米国経済の軟着陸への期待を危うくすることを懸念していると非公式に語った。

DPワールドのユヴラージ・ナラヤンCFOは、紅海危機のもたらす混乱は欧州の輸入に悪影響を与えると予想していると語った。

「アジアから欧州が輸入する商品のコストは大幅に高くなることでしょう」と、スイスのスキーリゾートのダボスで開催されたWEF年次総会でナラヤンCFOはロイター通信に対して語った。

「欧州の消費者にとっては苦痛となるでしょう… 発展途上国よりも先進国に大きな打撃を与えることになるはずです」と、ドバイを本拠地とする物流会社の財務責任者であるナラヤン氏は付言した。

紅海経由の貨物船航路の戦争リスク保険料が上昇していると、保険業界筋が明かした。

スペインでは、フランスのタイヤ製造企業のミシュラン所有の4工場が今週末に再度生産を停止する予定となり、原材料の納入遅延の影響がさらに明確となった。

商船が被弾

マルタ旗を掲げたギリシャ所有のばら積み貨物船「ゾグラフィア号」がイエメンのサリーフ港の北西76海里の紅海を北上中にミサイルに被弾したと、ギリシャ海運省の関係者2人が語った。

イエメンのフーシ派は海軍の用いるミサイルを使用してゾグラフィア号への攻撃を実行し、結果は「直撃」だったとフーシ派のヤヒヤ・サレア報道官が発表した。

乗組員24人のゾグラフィア号は、ベトナムからイスラエルに向けて航行中で、攻撃を受けた際には積荷は空だったとギリシャの情報筋の1人が語った。「負傷者も無く、物的損害だけでした」と、情報筋は付言した。ゾグラフィア号は依然航行中だが、安全確認のために航路を変更するという。

高まる懸念の表れとして、NYKラインとして知られる日本の海運会社である日本郵船は、紅海付近を航行する同社船舶に対して、安全な水域で待機することを既に指示し、現在航路変更を検討中であるとと同社の広報担当者が述べた。

しかし、海運大手のマースク社は米軍と政府向けの物資を積んだコンテナ船2隻を紅海に送った。

ガザ停戦の呼びかけ

アジアから欧州への最速の貨物輸送経路であるスエズ運河に繋がる紅海では、コンテナ船が一時停止や迂回をしている。数多くの船舶が代わりに南アフリカの喜望峰回りの航路を選択することを余儀なくされている。

世界の船舶交通量の約12%が紅海経由でスエズ運河を通過しているのだ。

エジプトのスエズ運河当局は、民間企業が運河の通過を控えていることは「一時的」なものであるとし、運河の交通は「通常通り」との混乱を軽視した声明を発表した。

米国と英国のフーシ派攻撃がさらなる危機拡大の懸念を引き起こしたことから、英国の石油企業大手シェル社は紅海を経由するすべての同社船舶による輸送を無期限に停止したと、ウォール・ストリート・ジャーナルが1月16日に報じた。シェル社のコメントは無かった。

米国の石油企業大手シェブロン社は、紅海経由の航路を維持していると発表した。船舶の所有も運航もしていないエクソン・モービル社は、「連合海上部隊（CMF）のガイダンスを順守する船舶の所有者と運航者を引き続き支援します」と述べた。CMFは、紅海の安全の維持を目的とした多国籍海軍パートナーシップを意味する。

ロシアのタンカーグループであるフコムフロットも危機の拡大に備えて代替となる航路を検討しているとタス通信が報じた。ソフコムフロットは、ロイターのコメント要請に即時的には応じなかった。

EU加盟国は遅くとも2月19日までに船舶の保護を支援する海上軍事作戦を立案実行することに最初の支持を示したと欧州の外交官たちは語った。

イエメンの副大統領は、1月16日、紅海の商業交通の保護を目的とした米国の既存の連合は、中東地域の大国であるサウジアラビアやアラブ首長国連邦、エジプトが参加していないため脆弱だと語った。

イエメンのアイダルー ・アルズバイディ副大統領は、紅海南端の狭い海峡について触れ、「全世界と中東地域はこのバブ・エル・マンデブ海峡に関心を持っています。そのため地域レベルでの介入が重要なのです」と語った。

アルズバイディ副大統領の率いる南部暫定評議会は、分離主義者たちの組織で、イエメンでイランが支援するフーシ派に対抗する同盟の一角である。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、1月15日、イランのホセイン外相と会談したことを、グテーレス事務総長の報道官のステファン・ドゥジャリック氏が1月16日に明らかにした。

「紅海の状況について、事務総長はすべての当事者に対して、これ以上の事態のエスカレートを避けるようあらためて呼びかけました」と、ドゥジャリック氏は語った。

サウジアラビアの外相は、フーシ派による商船への攻撃とガザ地区での戦闘との関連性を強調した。ファイサル・ビン・ファルハーン・アール・サウード王子は、サウジアラビアの優先事項は、ガザ地区での停戦を通じて戦火の拡大を阻む可能性を見出すことなのだと語った。

ロイター