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ベイルート港爆発事件の担当判事の停職により捜査は振り出しに

2020年8月4日、ベイルート港爆発事件で数百人の死者と数千人の負傷者が出て、首都ベイルートの広い地域が破壊された。(ロイター)
2020年8月4日、ベイルート港爆発事件で数百人の死者と数千人の負傷者が出て、首都ベイルートの広い地域が破壊された。(ロイター)
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28 Sep 2021 05:09:47 GMT9
28 Sep 2021 05:09:47 GMT9
  • ノハド・アル・マシュヌーク議員の上訴の決定が出るまでの間、タレク・ビタル判事は事件のすべての法的続きを停止する

ナジャ・フーサリ 

ベイルート:9月27日、ベイルート港爆発事件の司法捜査官タレク・ビタル判事は、同事件の担当職務の停止を通知された。先週ノハド・アル・マシュヌーク議員が同判事の停職を求める上訴を行っていた。

ベイルート控訴裁判所がアル・マシュヌーク氏の上訴の諾否を決定するまでの間、ビタル判事は同事件の捜査とすべての法的続きを停止する。

ビタル判事は2月19日に、ファディ・サワン判事の後任として、爆発事件の捜査を指揮する2人目の判事に任命された。サワン判事は、主任捜査官に任命された4カ月後の2月18日に、同事件の担当職務を停止された。これはサワン判事が同事件に関連して起訴したアリ・ハッサン・カリル、ガジ・ズアイター両元大臣の要請を受けたもので、「正当な嫌疑」を理由に同事件は移送された。

2020年8月4日に世界を震撼させたこの災害は、レバノンの首都の臨海地区を破壊して215人の命を奪い、負傷者は6,500人以上といわれている。爆発は当局の推定で2,750トンとされる硝酸アンモニウム備蓄の一部に引火して起こった。同港の第12貯蔵庫に、大量の他の押収爆発物と一緒に保管されていた。

硝酸アンモニウムは2014年に港に停泊中の船舶から没収された。

ビタル判事とサワン判事は、ハッサン・ディアブ元首相、他の現職の大臣や議員数名、軍の上級将校、将軍、国家安全保障当局者、同港の上級職員、判事数名を起訴した。

容疑は怠慢による過失犯罪だ。この犯罪事件の死者は200人以上、負傷者は数千人、うち一部は重大な身体障害や永続的な労働能力喪失を伴っており、他に港とその施設、多数の家屋、公共財産、私有財産も破壊された。

27日、ビタル判事はこの事件で元情報当局責任者ジョーダット・オワイダット氏を取り調べ、その後カミル・ダヘル准将とガッサン・ガルゼディン准将の取り調べ手続きを開始した時点で、自身の停職の決定を通知された。

アラブニュースが司法筋から得た情報では、先週の金曜日にビタル判事は事務総長ガッサン・クーリー判事を破棄院公訴官に付託し、「所有していた間に硝酸アンモニウムの事件記録をしまい込んだ」容疑で同判事を立件することを要請した。

判事の訴追手続きは破棄院公訴官が担当し、犯罪捜査を行う司法捜査官の担当職務ではない。

ビタル判事の停職決定は正式なものだが、最終決定には至っておらず、破棄院の決定を待っている状況だ。アル・マシュヌーク氏の要請が受け入れられると、事態は振り出しに戻る。

この事件の被告であるユセフ・フィニアノズ元大臣は既に、「正当な嫌疑に基づき爆発事件をビタル判事から移送する要請」を行っていた。

ビタル判事は公訴局への付託を更新して、警察総局長官アッバス・イブラヒム少将と国家安全保障局長官トニー・サリバ少将の起訴許可を求める2件の新規要請を、内務大臣と閣僚評議会官房宛てに行った。

ビタル判事は、アリ・ハッサン・カリル大臣の取り調べ日を9月30日に、ガジ・ズアイター、アル・マシュヌーク両大臣の取り調べ日を10月1日に設定していた。そして、新たな日程として、10月4日にハッサン・ディアブ元首相の審理を設定した。ディアブ氏はビタル判事が本人への取り調べ日の通知を決定した後、米国に滞在している。

元公訴官のハティム・マディ判事は、「司法が揺さぶられる時は、何か間違いが起こったということだ」とアラブニュースに語った。「ベイルート港で発生した犯罪がある。最初の司法捜査官は解任され、現在2人目の司法捜査官が解任されようとしている。司法とのこのやりとりはいつまで続くのか?3人目の司法捜査官を任命する腹積もりはあるのか?3人目の司法捜査官が前任2判事の志を受け継いだらどうなるのか?3人目も解任するのか?司法部から判事がいなくなるまで(続けるつもりか)、それとも別の惑星の判事に訴えるのか?」

「相手方が判事の公平性を疑っている時は、自分の利益に反する判決を受けることを恐れているということだ」とマディ氏は述べた。

ビタル判事が公平に職務を行うかどうかについて、マディ氏は次のように述べた。「判事が職務を行うとき、判事が公明正大だとしても、誰かが反対に回る。ふつう、判事はこれを無視する。ビタル判事の犯罪捜査方針については承知していないが、これまでに判事が行ってきたことは適切で、専門的な手腕を発揮しており、これは疑いがない。ビタル判事が他の方法ではなくこの方法を選択したのは、自分が事件処理に責任を負っていて、自分が捜査担当者たちの上司だからであり、自ら適切と考える道筋を選択している。これはビタル判事が過ちを犯したということではない」

ビタル判事は事件処理から離れるよう、ヒズボラから脅迫を受けた。最初の脅迫は昨年8月にヒズボラのハッサン・ナスラッラー書記長が行ったもので、事件を「政治化」しているとして判事を公然と非難していた。「(ビタル氏は)明確にテクニカルな捜査に固執しなければならない。そこから逸脱すれば、司法部は別の判事を見つけなければならなくなる」

2つ目の脅迫はヒズボラの警備連絡将校ワフィク・サファ氏からで、同氏は先週ベイルートの司法省に赴いて数名の判事と面会した。サファ氏は司法省詰めのジャーナリスト、ララ・アル・ハシェム氏にビタル判事へのメッセージを託した。「我々はおまえにうんざりしている。我々は法的な道筋を最後までたどるが、良い結果が見られなかった場合、おまえを根絶やしにする」

26日、アル・ハシェム氏は「ビタル判事にメッセージを届けた」ことを明らかにした。判事の反応は、「ワフィク・サファは正解だ。私を根絶やしにするプロセスがどのようなものだとしても」というものだったという。

アル・ハシェム氏はサファ氏のメッセージを差別公訴官にも伝えたという。そして、「通信データや監視カメラがあり、目撃者がいる。私自身は法の保護の下にいる」と付け加えた。

ヒズボラの脅迫は司法部内で大きな怒りを巻き起こしたが、大衆の非難が沸き起こるまでには至らなかった。

政党レバノン軍の議員イマド・ワキム氏は、ビタル判事の同事件の担当職務の停止についてツイッターでコメントした。「ワフィク・サファ氏に司法捜査官になってほしいと思うか?」

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