バルジンジ氏は金曜日、AP通信の取材に応じ廃墟と化した場所を案内し、かつて自宅兼オフィスがあった場所にある大きなクレーターを指さした。
エルビル:かつて豪華な邸宅であった、イラクのクルド系石油王の広大な自宅が、今週初めにイラク北部の都市エルビルの米国領事館群の近くでミサイルが一斉に発射されたことにより廃墟と化した。
イランの強力な革命防衛隊は、先週の日曜日に攻撃を開始し、イスラエルのスパイ機関モサドの「戦略センター」と称する場所に12発の巡航ミサイルを発射したと発表した―前週にイランの準軍事組織のメンバー2人を殺害したイスラエルのシリアへの攻撃に対する報復である。
イラクのクルド系石油会社KARグループのCEOであるバズ・カリム・バルジンジ氏は、モサドとの関係を否定している。
ミサイルで同氏の素晴らしい家は破壊されたが、彼は家族が無事で良かったと話している。
米国領事館に被害はなく、攻撃による負傷者も報告されていない。
米国は、領事館が標的とは考えていないとしている。
しかし、この砲撃は米国とイランの関係を著しく深刻化させるものであった。両国の敵対関係は、両国と同盟関係にあるイラクでしばしば表面化してきた。
バルジンジ氏は、金曜日にAP通信の取材に応じ、かつて彼の自宅兼オフィスがあった場所に開いた大きなクレーターを指差した。バルジンジ氏は、妻と10代の子ども2人とともに近くの農場を訪れていたところ、攻撃を受けたという。
かつて政府高官が外交官や影響力ある人物たちと肩を並べた豪華な居間は、今ではガラスやコンクリートの破片、瓦礫の山で散乱している。窓も屋根もなくなり、邸宅の壁の残骸はかろうじて立ち、床は瓦礫で覆われている。
「ここは私の家族が住む家で、写真も持ち物もすべて」ここにあったと彼は言った。「恐ろしいことです」
娘のバン・カリムさんは、頭上をミサイルが飛び交う中、家族で飼っていた犬たちと共に庭で身を寄せ合っていた様子を語る。「私たちは、彼らから自分たちが見えているのか、それが無人機であるかどうか、私たちは爆弾についても、今何が起こっているのかも何もわかりません」と彼女は英語で話した。
観測筋は、世界がウクライナでロシアが行っている戦争に注目している中で、この攻撃のタイミングは大きな意味があったのではと推測している。
イラクの北部クルド自治区は、現地で産出する石油の販売を通じてイスラエルと控えめなつながりを保っている。バルジンジ氏のKARグループは、ロシアのロスネフチとの合弁事業によりトルコのセイハンへ繋がる輸出パイプラインを建設し、運営している。
「イラン人が言っていることは明らかにナンセンスだ。これはイスラエルの基地ではありえないのに」とイラクのクルド人政治アナリスト、ヒワ・オスマン氏はバルザンジ氏の邸宅についてこう語った。
イラクの情報機関関係者は、今回の攻撃について匿名を条件に語り、この家がイスラエルのスパイ活動の中心地であるという主張を否定し、外交官がたびたび社交の場を持つ場所であると付け加えた。
この攻撃は、2020年1月、バグダッド空港の外でイランの軍閥、カセム・ソレイマニ氏を殺害した米国の無人機攻撃への報復として、米軍が駐留するアイン・アルアサド空軍基地をミサイル攻撃して以来、イランがイラク国内で行った最初の攻撃だった。
「これはイランの基地と国民への(イランによる)メッセージです。長い間屈辱を味わってきたために、イランは士気を高める必要があった」と、シーア派民兵を専門とするワシントン研究所のハムディ・マリク准研究員は述べた。
マリク氏は、日曜日の攻撃は犠牲者を最小限に抑え、アメリカの利益に直接害を与えないように慎重に計画されたものである―しかし、ウィーンでイランと世界の主要国との核協議が停滞している中で、アメリカに対して「次回はもっと規模が大きく、危険なものになる可能性がある」というメッセージも発していると考えている。
この攻撃はイラク政府に注意を喚起させる役割も果たした。イラク政府においては政権樹立の協議が滞り、2021年のイラク議会選挙で勝利したムクタダ・サドル師が、クルド人やスンニ派と同盟を結ぶことで親イラン派の政党を排除すると脅されている。
イランによる「イラクのパートナーへのメッセージは、誰が選挙に勝とうとも(中略)イラクは我々の裏庭であり、我々はいつでも好きなことをすることができるということだ」とマリク氏は述べた。
AP