
エルサレム:イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は18日、ガザ地区における軍事攻撃の縮小や、戦争後のパレスチナ国家樹立に向けた措置を求める米国からの要請を拒否し、ホワイトハウスは即座にこれを非難した。
この緊迫したやりとりは、イスラエルの戦争の範囲や、苦境にあるガザ地区の将来の計画をめぐり、2つの同盟国間に大きな溝が広がっていることを示している。
「我々は明らかに異なった見方をしている」と米国防総省のジョン・カービー報道官は語った。
ネタニヤフ首相の発言は、アントニー・ブリンケン米国務長官が、パレスチナ独立への道筋なしにイスラエルが「真の安全保障」を手にすることはないだろうと述べた翌日になされた。米国はまた今週初め、イスラエルはガザでの壊滅的な軍事攻撃の強度を下げる「適切な時期」にあると発表していた。
全国放送された記者会見で、ネタニヤフ首相は挑戦的な口調で、イスラエルはガザの過激派組織ハマスの壊滅と、ハマスが拘束している残りの人質全員を帰還させるという目標を達成するまで攻撃を止めないと繰り返し述べた。
彼は、イスラエル批判の大合唱が高まっている、これらの目標は達成不可能だという主張を否定し、何カ月も攻彼は、これらの目標が達成不可能であるとする、広がりつつあるイスラエルへの批判者たちの主張を否定し、攻勢は何カ月も続くと宣言した。「我々は絶対的な勝利を得るまで止まることはない」とネタニヤフ氏は述べた。
イスラエルは10月7日、ハマスによる前例のない規模の越境攻撃で1200人が死亡し、約250人が人質に取られた後、攻撃を開始した。イスラエルは、およそ130人の人質がハマスの捕虜となっていると考えている。この戦争は地域全体の緊張を高めており、他の紛争を引き起こす可能性がある。
イスラエルによる攻撃は、近年の歴史上最も致命的で破壊的な軍事作戦のひとつであり、ガザ保健当局によれば、2万5千人近くのパレスチナ人が死亡している。戦争は広範囲に破壊をもたらし、同領土の住民230万人の80%以上が避難生活を余儀なくされている。
この戦争による莫大な犠牲により、国際社会からは攻撃停止を求める声が高まっている。
戦争初期にはイスラエルを全面的に支援していた、最も親密な同盟国である米国も、最近は懸念を表明し、ネタニヤフ氏に戦後のガザに関するビジョンを明らかにするよう求めている。
米国は、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区で半自治区を統治している、国際的に承認されたパレスチナ自治政府を「再活性化」させ、ガザを統治させるべきだと述べている。ハマスは2007年、ガザから自治政府を追放した。
米国はまた、パレスチナ国家の樹立に向けた措置を求めている。パレスチナ人は、ガザ、ヨルダン川西岸地区、東エルサレムを独立国家の領土として求めている。これらの地域は、1967年にイスラエルによって占領された。
17日、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)でブリンケン氏は、イスラエルを守り、穏健なアラブ諸国を団結させ、イスラエルの宿敵であるイランを孤立させるためには、二国家解決が最善の方法だと述べた。
「パレスチナ国家への道筋」なくして、イスラエルは「真の安全を得ることはできない」と彼は語った。
同じ会議で、サウジアラビアの外相は、より大きな政治的合意の一環として、王国はイスラエルと完全な関係を築く用意があると述べた。「しかし、それはパレスチナ人のための和平、パレスチナ国家を通じてのみ起こりうる」と彼は付け加えた。
パレスチナ国家樹立に反対する極右政権を率いるネタニヤフ首相は、二国家解決への長年の反対を繰り返し表明した。彼は、パレスチナ国家はイスラエルへの攻撃の発射台になるだろうと述べた。
「イスラエルはヨルダン川西側全域にわたる安全管理を行う必要がある」と彼は言い、「さもなくば、それは主権の概念と衝突する。我々に何ができるのか?」と付け加えた。
「私はこの真実をアメリカの友人たちに伝え、イスラエル国家を危険にさらすような現実を強要しようとする試みにブレーキをかける」と彼は述べた。
この発言に米国政府は即座に反発した。カービー氏は、ジョー・バイデン大統領は二国家解決に向けた「努力をやめない」と述べた。
10月7日以前、イスラエル社会はネタニヤフ首相の司法改革案をめぐり、激しく分裂していた。襲撃以降、イスラエル国内は戦争の下で結集していた。しかし、ネタニヤフ首相の戦争への対処をめぐって、再び分裂が表面化し始めている。
人質の家族や、その支援者の多くは、人質を帰還させることができる新たな停戦を求めている。
ハマスは11月に行われた1週間の停戦中に、パレスチナ人囚人と引き換えに100人以上の人質を解放した。
テルアビブでは、イスラエルの最年少の人質であるクフィル・ビバスちゃんが最初の誕生日を迎えるにあたり、家族と連帯するために、何十人もの人々が厳粛な集会に参加した。この赤毛の幼児と4歳の兄アリエル君は、母親のシリ、父親のヤルデン両氏と共に人質に取られた。この4人全員が今も拘束されている。
オブザーバーたちは、攻撃のペースの遅さ、イスラエルは強く否定している国際刑事裁判所(ICC)へのジェノサイド(大量虐殺)の告発を含めた国際的な批判の高まりを考慮に入れ、ネタニヤフ氏の目標が現実的かどうかを疑問視し始めている。
ネタニヤフ首相の政敵たちは、彼が政府の失策が調査されるのを避け、連立政権を維持し、選挙を先送りするために、戦後のシナリオについての議論を遅らせていると非難している。世論調査によれば、汚職容疑で裁判中のネタニヤフ首相の人気は、戦争中に急落している。
人質のための医薬品がガザに搬入される
フランスとカタールが仲介した取引の一部としてガザに入った医薬品が、ハマスに拘束されている慢性疾患を持つ数十人の人質に配られたかどうかについては、18日には明らかにされなかった。
この合意は、11月以来、交戦中の両当事者間に仲介された最初の取引だった。この合意には、パレスチナ市民のための医薬品、食料、人道支援物資の大量輸送も含まれていた。
カタールは17日遅く、医薬品がガザに入ったことを確認したが、地下壕などの秘密の場所に拘束されている人質に配られたかどうかはまだ明らかではない。
人質解放を支援した赤十字国際委員会は、医薬品の配布には関与していないと述べている。
ガザでの戦闘
ハマスは、最も荒廃した地域を含め、ガザ全域で反撃を続けており、イスラエルに向けてロケット弾を発射している。
ハマスは、恒久的な停戦がない限りこれ以上の人質を解放しないと述べているが、イスラエル、および最大の同盟国である米国はこのような停戦の可能性を排除している。
何十万人ものパレスチナ人がイスラエルの避難命令に従い、国連が運営する避難所があるガザ南部に詰めかけており、そこでは大規模なテントキャンプが設置されている。
イスラエルは、ガザ全域で武装勢力を標的にしていると主張する攻撃を続けており、しばしば女性や子どもを殺害している。
ガザ南部の町ラファでは18日未明、民家に対するイスラエルの空爆によって16人が死亡し、その半数が子どもだったと医療関係者が語った。
イスラエルは、高い民間人の死者数について、ハマスが住宅密集地で戦っているからだと非難している。イスラエルは、自軍がおよそ9000人の武装勢力を殺害したと述べているが、証拠は示していない。また、ガザ地上作戦開始以来、193人の自軍兵士が死亡したと発表している。
18日、イスラエル軍は、ガザ中心部の主要な南北道路の近くにあるハマスの武器製造業の「中心部」を破壊したと発表した。この複合施設には、武器工場や、ガザ全域に武器を輸送するための広範なトンネル網が含まれていたという。
戦争は地域全体に波及している
戦争は中東全域に波及しており、イランの支援を受けた組織が米国やイスラエルの標的を攻撃している。レバノンではイスラエルとヒズボラ武装勢力の間で低強度の戦闘が起きており、これは全面戦争に発展する恐れがある。イエメンでは反体制派フーシ派が、米国主導の空爆にもかかわらず、国際海運を標的にし続けている。
イスラエル軍は18日、紅海上空で、おそらくドローンやミサイルと思われる「疑わしい空中目標」に向けて迎撃ミサイルを発射し、南部の都市エイラートではで空襲警報が発動したと述べた。フーシ派はイスラエルに向けてドローンやミサイルを発射しているが、そのほとんどは失敗に終わるか、迎撃・撃墜されている。
一方、イランは、イラクにあるとされるイスラエルのスパイ基地やシリアの武装勢力基地を標的とする一連のミサイル攻撃を行った。
AP