
エルサレム:ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ガザ戦争におけるイスラエル軍の最悪の損失と、人質を奪還できていないことに対する批判の高まりを受けて、危機の深刻化に直面している。
22日にイスラエル軍の兵士24人が死亡し、イスラエルが10月下旬にガザで地上攻撃を開始 して以来、一日当たりの兵士の死者数で最悪の損失を被ったことをことから、パレスチナ自治区におけるイスラエル軍の戦略は、厳しい批判の的となっている。
死者のうち21人は予備兵で、彼らは一つの事件で死亡した。
ロケット弾が戦車とイスラエル兵士が爆破しようとしていた建物2棟に命中した今回の事件をネタニヤフ首相は「大惨事」と見なした。
テルアビブ大学で講師を務めるエマニュエル・ナヴォン氏は、AFPに対し、兵士の損失は「すべての人に影響を与えている。国民のほとんど全員に、(ガザで戦っている)息子や兄弟、親戚がいるからだ」と語った。
イスラエル人は今、「どういう戦略なのか。本当にハマスにとどめを刺すまで続けるのか」をますます問うようになっている。
同時に、人質の親族が22日にテルアビブやエルサレムのネタニヤフ首相の自宅前で「みんな、今すぐ」と唱えながら人質の帰還を求めた抗議デモを受け、ネタニヤフの戦時内閣にも亀裂が生じている。
テルアビブ近郊のバルイラン大学で講師を務めるジュリア・エラド・ストレンガー氏は、「現在の戦時内閣の雰囲気は非常に悪い」と語った。
ネタニヤフ首相は10月7日の攻撃を受けて、パレスチナの武装組織ハマスの排除を固く誓っているが、内閣内では、その姿勢はガザで拘束されている人質の帰還とは相容れないとの見方が強まっていると専門家はAFPに語った。
専門家によると、5人から成る戦時内閣の2人であるベニー・ガンツ氏とガディ・アイゼンコット氏は、ハマスに対する軍事的圧力のみが人質奪還を可能にするというネタニヤフ首相の姿勢を否定しているという。
「ネタニヤフ氏によれば、ハマスが残存する限り勝利はあり得ず、ガンツ氏とアイゼンコット氏によれば、人質を失ったままの勝利はあり得ない」と、エルサレム・ヘブライ大学の政治学教授であるルーベン・ハザン氏は述べた。
ガザでの戦闘で息子を亡くしたアイゼンコット氏は、先週のインタビューで、ネタニヤフ首相のかねてからの立場から離脱したと述べた。
「近い将来、 (ハマスとの)合意なしに人質を生きて連れ戻すことは不可能だ」とアイゼンコット氏はイスラエルの放送局チャンネル12に語った。
イスラエルの公式発表に基づくAFPの集計によると、民間人を中心に約1140人が死亡したハマスによる10月7日の前代未聞の攻撃を受け、ネタニヤフ首相は、ハマスに対する「完全な勝利」を達成することを誓った。
イスラエルのデータに基づくAFPの集計によると、ハマスは約250人の人質を拘束し、少なくとも28人の死亡した人質の遺体を含む約132人が包囲されたガザに残っているとイスラエルは述べている。
10月7日の攻撃を受けて、イスラエルはガザで容赦ない攻撃を開始し、ガザの保健省が23日に発表した最新の犠牲者数によれば、少なくとも2万5490人が死亡し、その約70%が女性、幼児、青少年であった。
ネタニヤフ首相は、イスラエル人人質80人の解放につながった11月の合意と同様の合意に達するために、政府はハマスと再度協議を行うべきだという提案を拒否している。
カタール、米国、エジプトが仲介した11月の合意では、7日間の人道的停戦が合意され、ガザへの援助物資の輸送が許可され、人質と引き換えに数百人のパレスチナ人囚人が解放された。
ネタニヤフ首相は21日、ハマスとの会談を拒否する姿勢をさらに強め、「ハマスが要求する条件は、単純な真実を示している。勝利に代わるものはない」と述べた。
ネタニヤフ首相は、ハマスが人質解放の条件として、戦争の終結、ガザからのイスラエル軍の撤退、そしてハマスが政権を維持することの保証を挙げていると述べた。
専門家らは、イスラエルの首相が、軌道修正への圧力が高まる中でも、権力の座にとどまるための戦術として戦争を続けるだろうと予想していると述べた。
国際危機グループのシニアアナリスト、マイラブ・ゾンスゼイン氏は、「ネタニヤフ氏は、自身の政治的利益のためだけでなく、終わりなき戦争が彼の一般的な戦略であるため、この戦争を続けるという決断を下したのだと思う」と述べた。
「ネタニヤフ氏としては、戦争が2024年以降も続くのであれば、10月7日が我々から遠ざかり、再建のチャンスが得られるので、政治的に有利だということだろう」とヘブライ大学のハザン氏は述べた。
「今、ネタニヤフ氏はキャリアの中で最悪の時期にいる」とハザン氏は語った。
AFP