
ガザ地区:イスラエル軍がパレスチナのイスラム過激派組織ハマスを標的にし、主戦場となっているガザのハーン・ユーニスで、27日、激しい戦闘が起こった。
ハーグを拠点とする国連の国際司法裁判所(ICJ)がジェノサイド(民族大量虐殺)防止の命令を下した翌日も、攻撃が衰えることはなかった。ICJは、イスラエルは紛争においてジェノサイドの可能性がある行動を防止しなければならないと命じたが、停戦の要請には踏み込まなかった。
10月7日のハマスの攻撃に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のスタッフ数名が関与したとイスラエルが主張したことで、イスラエルとUNRWAとの間で緊張が高まっている。一部の主要な援助国はイスラエルの主張を受けて、UNRWAへの資金拠出を一時停止した。
イスラエルのカッツ外相は27日、同国が、ガザに数万人ものスタッフを擁する国連機関であるUNRWAを、かつてない犠牲者を出しているガザ紛争の「終結翌日から排除する」と述べた。
米国、オーストラリア、カナダはこの主張を受けて、すでにUNRWAへの資金拠出を一時停止していた。UNRWAはハマスに協力していた複数のスタッフに対する調査を開始している。
英国、イタリア、フィンランドは27日になって、UNRWAへの資金拠出を一時停止した。
10月7日の襲撃の首謀者とされるハマスのガザ地区の責任者ヤヒヤ・シンワール氏の故郷である、ガザ南部ハーン・ユーニスの民間人の窮状について懸念が高まっている。
AFPTVの映像には、イスラエル軍の戦車が背後から迫る中、女性や子供を含む数千人の民間人が徒歩で避難する様子が映し出されている。
「彼ら(イスラエル軍)に包囲されたので逃げました」。娘を連れてハーン・ユーニスを離れたタハニ・アル・ナジャールさんが語った。「国連が介入して、戦争を止めてください。恐怖やテロ行為はもうたくさんです!」
ガザの民間防衛局のマフムード・バサル報道官は、避難民は絶え間なく降る冷たい雨に耐えていると述べ、「感染症の蔓延」について警告した。
イスラエル軍は「同部隊が至近距離から多数の武装したテロリストの殺害を継続し」、ハーン・ユーニスの武器保管施設を襲撃したと発表した。
ハマスが運営するガザ保健当局は、一晩で少なくとも135人がハーン・ユーニスで殺害されたと発表した。
ハマス政府の発表によると、ガザの難民キャンプとナセル病院を標的とした「大規模な戦車砲撃」があったという。
26日、待ち望まれていた措置命令がICJから出され、イスラエルはガザ地区でのジェノサイド行為を防止し、ほぼ4カ月もの間、爆撃と包囲を続けた同地区への人道援助を許可しなければならないと命じられた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの訴訟を「言語道断」として反発したが、ガザのハマス指導者らは今回の措置決定を歓迎し、「イスラエルを孤立させ、ガザでの犯罪行為を暴くのに貢献している」とした。
この決定は、長年にわたりパレスチナの大義を支持してきた南アフリカによる提訴に対する緊急措置に基づく。しかし、ジェノサイドの有無についての広範な判断には数年かかる可能性がある。
「世界がイスラエルに対し常軌を逸していると、初めて伝えることができました」。ガザで避難している42歳の女性、マハ・ヤシンさんが語った。
「歴史上、一度も起こっていないことを、イスラエルがガザで4カ月にわたり私たちに行ったのです」
イスラエルの公式統計に基づくAFPの集計によると、イスラエル国内で約1140人(大半が民間人)が死亡した、10月7日のハマスによる襲撃の直後、イスラエルの軍事作戦が始まった。
ハマスによって拉致された約250人の人質のうち、イスラエルの主張によると、少なくとも28人の遺体を含む約132人がガザに捕らわれたままだという。
イスラエルはハマスを壊滅すると明言している。ガザの保健当局によると、イスラエルの軍事攻撃により少なくとも2万6257人が殺害されており、そのうち約70%が女性と子供である。
イスラエル軍によると、ガザでの地上作戦を展開してから、少なくとも220人の同軍の兵士が殺害されている。
ガザの人道危機が高まる中、国連によると、紛争で避難を強いられた推定170万人のパレスチナ人の大半がエジプトと国境を接するガザ南部ラファに押し寄せているという。
国境なき医師団(MSF)によると、ガザ最大の病院、ハーン・ユーニスのナセル病院には外科手術の能力が「ないも同然」という。
MSFによると、病院の機能は「崩壊」しており、残った少数のスタッフは「大量に生まれる犠牲者に対応するには不十分な、ほんのわずかな物資で対処しなければならない」という。
世界保健機関(WHO)のテドロス・アドノム・ゲブレイエスス事務局長は、周辺では戦闘が続いており、患者350人と避難民5000人が病院に残っていると述べた。
パレスチナ赤新月社によると、イスラエル軍の戦車はガザ地区に残る数少ない医療施設のひとつであるアル・アマル病院を標的にしており、「激しい銃撃で包囲されている」という。
MSFによると、「ガザにはもう、医療施設は存在しない」
ナセル病院には、「開放創、爆発による裂創、骨折、火傷などの紛争による負傷」を負った300人から500人の患者が閉じ込められていた。
イスラエル軍は、ガザの病院の下にあるトンネルから作戦行動を実施し、医療施設を司令部にしているとしてハマスを非難している。
イスラエルのメイラフ・エイロン・シャハール国連大使は今週、ハマスがガザ地区の病院を「軍事利用」しているという、イスラエル側の証拠を無視し、ハマスと共謀しているとして、WHOを非難した。
テドロス氏は、「弱い立場の人々のために命をかけているスタッフを危険にさらす可能性がある」として、このイスラエルの非難を退けた。
UNRWAは24日、ハーン・ユーニスの避難所のひとつが戦車の砲撃を受けて、13人が殺害されたと発表し、イスラエルとUNRWAの関係はさらに悪化していた。
UNRWAは26日、10月7日の襲撃に関与したとイスラエルによって告発されたスタッフ数名を解雇したと発表した。
このイスラエルの告発を受けて、米国、カナダ、オーストラリア、イタリアがUNRWAへの資金拠出を一時停止した。
イスラエルは戦闘終結後、UNRWAはガザで活動させないようにすると発表した。ハマスは国際社会に対し、イスラエルの「脅し」を無視するように要請した。パレスチナ自治政府は、UNRWAは資金拠出国からの「最大限の支援」を必要としていると発表した。
11月の1週間にわたる停戦では、イスラエルに拘束されていたパレスチナ人捕虜と引き換えに、ハマスが数十人の人質を解放した。外交努力を通じた、ガザへ提供される援助物資の規模拡大と休戦が求められている。
ある治安筋がAFPに語ったところによると、ウィリアム・バーンズ米CIA長官が数日中にパリを訪れ、イスラエルの情報機関の長官、エジプトの情報長官、カタール首相と会談し、停戦を求める予定だという。
国連安全保障理事会は31日、ICJによる暫定措置命令について話し合うため会合を開くことになっている。
AFP、ロイターより