
ガザ地区:ハムゼ・タバシュさんは毎日、途切れがちな携帯電話の電波を拾おうと、ガザのテントからエジプト国境まで歩く。彼は戦争で離ればなれになった愛する人へボイスメッセージを送信し、願わくば返信が来るのを待っている。
「メッセージひとつで、魂は蘇る」と彼は言う。
イスラエルによる激しい爆撃と地上攻撃を受けて家を離れざるを得なくなったガザの230万人の大部分はテント村に散らばっている。最も大切な人たちの安否を知るには、壊れた電話網に頼るしかない。
地元の通信網は、特にパレスチナ自治区の北部と中央部ではほとんど機能していない。そのため、多くの人々がエジプトの通信網に接続しようと国境沿いに立つ。
「母さん、元気かい?元気だといいけど。こちらは大丈夫だ。安心させたかったんだ。心配しないで」とタバシュさんは短いボイスメモを録音し、送信しようと携帯電話を宙にかざした。
一家はハーン・ユーニスの出身だが、イスラエルがガザ最大の都市である同都市に攻撃を集中させ始めたときに別れた。タバシュさんはラファに向かい、母親は家族の家に留まった。
ハーン・ユーニスではここ数日、激しい戦闘と破壊が続いており、そこにまだ家族がいる人々は、彼らの安全を深く心配している。
エジプトとの国境フェンスに張られた最初の有刺鉄線近くの高台に立っていたタバシュさんのそばでは、他の人々が砂の上に座ってメッセージを打ち込んだり、円を描くように歩きながら電話に話しかけたり、携帯電話を空中に掲げて電波を探そうとしていた。
ガザの電話ネットワークは、地元プロバイダーのPaltelによって運営されているが、10月7日以来、同社は提供サービスの崩壊を10回以上報告している。
国境フェンスのそばに座り、不安げな表情を浮かべていたマリアム・オデさんは、ハーン・ユーニスに残る家族の一部と離ればなれになってしまったと語った。
「私たちは親族と連絡を取り、彼らを安心させ、私たちがまだ生きていることを伝えたい。毎日、親類に電話するためにエジプト国境まで来ている。もし彼らから電話があっても、ラファでさえもサービスは機能していない。ここにいないと、彼らが私たちに電話しても繋がらない」と彼女は言った。
ロイター