
カイロ:エジプトは、ガザ地区から避難してきたパレスチナ市民を受け入れるための、壁で囲まれた難民キャンプをシナイ半島に建設中だという。米国メディアの報道とエジプトの人権監視団体が16日に伝えた。
しかし、ハマスの武装組織と4ヶ月に及ぶ戦争をガザで遂行しているイスラエルは、ガザ最南部のラファでの攻撃を準備しているが、そこに住民を移動させる計画はないと述べた。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、8平方マイル(21平方キロメートル)の「壁で囲んだエリア」が境界のエジプト側に建設されているという。
さらにWSJによれば、このエリアは、エジプトでの停戦交渉が失敗した場合の「不測の事態に備えた計画」の一環であって、10万人以上を収容できるという。
エジプトのNGO「シナイ人権財団」は今週(2月11日週)、「集団脱出が起きた場合に備えた」パレスチナ難民を受け入れる施設の建設を示すと主張するリポートを発表した。
AFP通信は、15日に撮影されたシナイ北部のエリアの衛星写真を確認した。エジプトとガザの境界に沿って壁を建てる重機が写真で確認できる。このエリアはセキュリティが厳重であり、記者は立ち入ることができない。
2月10日に撮影された衛星写真と15日に撮影されたものを比較すると、土地の整地が行われていることがわかる。
北シナイ県のモハメド・ショーシャ知事は、エジプトが難民を受け入れるために「シナイに隔離区域」を用意していることを否定した。
この工事は、近年の動乱で破壊された住宅の被害額を評価して、所有者に「適切な補償」を行うためのものだと15日にショーシャ知事は説明した。
シナイ人権財団によれば、建設会社が「高さ7メートルの壁に囲まれた」エリアの建設を任されていると請負業者2社が証言したという。
このエリアは、エジプトの家屋の「がれき」の上に建てられているという。こうした家屋は、過去10年間エジプトとシナイ北部のイスラム武装勢力との戦いで「破壊されて」きた。
シナイの情報筋がAFPに語ったところによると、このエリアは、ガザ境界が突破された場合に備えて用意されているのだという。ガザ境界は、イスラエルとハマスの戦争が始まって以降、エジプトが境界壁を新たに建てたり緩衝地帯を設けたりして補強を行ってきた。
匿名を条件に一人の情報筋が語ったところによると「このエリアにはテントが用意され」、人道支援物資が搬入される予定だという。
ガザ境界のラファ検問所を管理するエジプトは、ガザからシナイ砂漠へのパレスチナ人の「強制移住」に対して繰り返し警鐘を鳴らしてきた。
こうした事態が発生した場合、エジプトが1979年にイスラエルと結んだ平和条約の根幹を揺るがしかねないと、アブドルファッターハ・エルシーシ大統領は述べた。
フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、集団脱出に反対するエジプトに理解を示した。
「パレスチナ人にとって、再び難民となることは悲惨なことです」とグランディ氏は16日、BBCに対して語った。
「あらゆる観点から見てエジプトにとって悲惨なことですし、何より重要なのは、さらなる難民危機が起これば、すでに危機にある今後の和平プロセスにとどめを刺すようなものだということです」
ガザの人口の半分を超える約140万人が、ガザの他の地域でのイスラエル軍の激しい爆撃から逃れて、現在はエジプト国境地帯のラファに押し込められて身動きが取れなくなっている。
しかしイスラエル軍は、ラファに入ることを避けるよう求める声が高まる事態に直面している。民間人に大量の犠牲者を出し、深刻な人道危機をさらに悪化させることにつながる恐れがあるためだ。
ヨアヴ・ガラント国防相は、16日テルアビブで、イスラエルは「パレスチナ市民をエジプトに避難させるつもりはない」と述べた。
さらにガラント氏は「我々はエジプトとの平和条約を尊重している。同国はこの地域の安定の礎であり、我々の重要なパートナーでもある」とも述べた。
ラファでの軍事行動についてガラント氏は次のように説明した。「ハマスの重要な拠点であるラファでの今後の作戦については、周到な計画を立てている」
さらに市民を標的にした作戦は行わないとも説明した。国連食糧農業機関によれば、市民は「前例のない」レベルの「飢餓に近い状態」に直面している。
10月7日以来イスラエルはガザ地区を包囲している。この日にハマスの戦闘員は、イスラエル南部の境界付近の集落を襲撃した。
イスラエルの発表に基づくAFP通信の集計によれば、約1160人が死亡し、約250人が人質となった。
イスラエルは約130人がまだガザにとらわれていると推定しているが、そのうち30人は死亡した可能性がある。
ハマスが支配するガザ地区の保健省によると、ガザでは開戦以来少なくとも2万8775人が死亡している。
AFP