



ドバイ:戦争は人命、経済、インフラに壊滅的な打撃を与えるが、見過ごされがちなのは、排気ガス、汚染物質、生態系の破壊という形で環境に与える永続的なダメージである。ガザでの戦争も例外ではない。
10月7日のハマス主導によるイスラエル南部への攻撃以来、ガザ地区はイスラエルによる激しい砲撃にさらされ、建物は粉砕され、医療施設は取り壊され、大地は爆薬の残骸で覆われ、空気は煙とコンクリートの粉で充満している。
ガザ保健省によれば、砲撃によって33,000人近くのパレスチナ人が死亡し、75,000人以上が負傷したが、イスラエルがラファへの侵攻を示唆し、停戦合意がすぐに成立するかどうかは疑わしい。
確かなのは、紛争がどのような形で終結しようとも、ガザの戦後、政府が地元の環境を回復させ、被害に長期的に対処しなければならないということだ。
「気候変動対策は、永続的な和平の進展と切っても切れない関係にある」と、ドバイを拠点とする世界的な気候技術プラットフォームである「The Surpluss」の創設者兼CEOのRana Hajirasouli氏はアラブニュースに次のように語った。
「環境破壊と現在の統治構造、権力、主権との間の重要なつながりを理解することが、平和と安定を確保するための気候政策において優先されるべきです」
イスラエルの軍事作戦がガザにもたらした攻撃は、大気汚染や水質汚濁の増加から生態系の悪化に至るまで、この地域に存在する環境問題を激化させている。
ロンドン大学クイーン・メアリー校、ランカスター大学、Climate and Community Projectが実施した調査によると、戦争開始から60日間だけで発生した二酸化炭素排出量は、小国20カ国の年間排出量を上回った。
1月9日にSocial Science Research Networkによって発表されたこの論文は、「イスラエル・ガザ紛争による、温室効果ガス排出の多時間的スナップショット」と題され、戦争の影響は少なくとも15万トンの石炭燃焼に匹敵することがわかった。
その多くは、空爆中のイスラエル戦闘機と地上侵攻に使用された装甲車によって発生した。その他に、イスラエルに物資を輸送する米軍からも排出された。ハマスのロケット弾による排出は1%にも満たない。
この研究結果に対して、Hajirasouli氏は次のように述べた「これには、エネルギー多消費型の軍備生産、インフラ建設、紛争後の復興活動などの間接的な排出は含まれていません。さらに、人口密度の高い都市部の破壊が、人間の健康と環境の両方に深刻な影響を及ぼすという証拠もあります。空爆による火災、特に建材を粉砕する火災は、アスベストを含むさまざまな有害排出物や大気汚染物質を放出します」
これらの排出物は環境に永続的な影響を及ぼし、呼吸器疾患を悪化させ、公衆衛生に重大な脅威をもたらす。
兵器そのものが大気や土壌を汚染することも少なくない。「焼夷性の高い白リンは、化学物質の痕跡を残します。リン酸の蓄積は土壌の肥沃度を奪い、浸食を悪化させ、農業に害を及ぼす」と同氏は続けた。
ガザ市、ガザ北部、またハーン・ユーニスの、様々な作物を栽培していた温室が339ヘクタールも破壊された。
戦争はまた、ガザの多くの人々にとって重要な収入源となっているオリーブや柑橘類の収穫を著しく妨げている。
国連食糧農業機関のマウリツィオ・マルティナ副事務局長は、2月の国連安全保障理事会で、武力紛争下での民間人の保護について議論した際、戦争がガザの農業に与えた影響を強調した。
農業はガザの住民にとって「重要な栄養と収入の源」であり、約10万人に収入をもたらす漁業も同様であると述べた。
マルティナ氏はまた、空爆や水・飼料不足による家畜の死にも言及した。2月15日の時点で、ガザの農耕地のほぼ半分が被害を受け、中でも羊や酪農場が最も大きな被害を受けている。
また、井戸の25%以上が破壊され、ガザ北部と中心部の水の確保に大きな影響を与えているという。
Hajirasouli氏によると、ガザの地下水は、廃水や海水による汚染で95%が飲用不可能とされており、ほぼ完全に枯渇しているという。
「清潔な水を利用できないことは、コレラなどの感染症のリスクを高めるだけでなく、病気を急速に蔓延させる要因を作り出している」と同氏は続けた。
ノルウェー難民問題評議会の推計によると、10月には毎日13万立方メートル以上の未処理の汚水がガザから地中海に放出され、環境破壊を引き起こしただけでなく、健康危機の要因を作り出している。
一方、戦闘で植生が失われたことで、土地の炭素固定能力は制限され、気候変動にさらに拍車をかけ「人口の増加と農地の減少が相まって、壊滅的な飢餓を引き起こしている」とし、国連が最近発表した、世界中で飢饉や壊滅的な飢餓に見舞われている人々の80%がガザ地区にいる、と同氏は強調した。
援助機関によると、ガザでは約50万人が飢餓の危機に瀕しており、230万人が深刻な食糧不足に直面しているという。
国連世界食糧計画の副事務局長であるカール・スカウ氏は、援助活動を直ちに大幅に増やさない限り、飢饉は「ほぼ避けられない」と警告している。しかし、国連食糧農業機関は、ガザへの支援物資の輸送が引き続き制限されており、効果的な人道的努力が妨げられていることを強調している。
マルティナ氏は先月、国連安全保障理事会で、「ガザ地区全域と、救命支援を必要とするすべての人々の安全かつ持続的な人道回廊が、最優先事項である」と述べた。
マルティナ氏は先月、国連安全保障理事会で、国境を越えた水道、通信、電気、医療施設などの基本的なサービスの回復を求めた。
戦闘がやがて収まったとしても、戦後の復興もまた、環境汚染の大きな要因になる可能性が高い。
Social Science Research Networkの試算によると、ガザで被害を受けた10万棟の建物を近代的な建築工法で再建するためには、少なくとも3000万トンの温暖化ガスを排出することになる。
これはニュージーランドの年間CO2排出量に匹敵し、スリランカ、レバノン、ウルグアイを含む135の国と地域の排出量を上回る。
Hajirasouli氏は、「強力な温室効果ガスの排出により、気候に長期的な影響が残ることは間違いないが、世界中の多くの人々がその影響を感じるだろう」と付け加えた。
最も印象的なのは、イスラエル人とパレスチナ人が、数十年来の敵対関係にもかかわらず、気候変動と環境悪化による共通の脅威に直面していることだろう。
世界銀行が12月に発表した「ヨルダン川西岸地区気候・開発報告書」では、気候変動のボーダーレスな性質が強調され、パレスチナ人とイスラエル人が共有する環境が相互に影響しあっていることが示唆された。
「気候変動に対処しないまま、もしくはどちらか一方のみが対処していたら、気候変動の悪影響は国境を越えて波及し、パレスチナ人とイスラエル人の両方の生活と生計に影響を及ぼす」と報告書は結んだ。