
ロンドン:国連の人道調整官は12日、イスラエル軍と外国の援助団体との意思疎通が円滑でなく、現地で改善が見られないため、さらなる援助がなければガザ北部は大惨事に直面すると述べた。
国連人道問題調整事務所のジェイミー・マクゴールドリック氏は、イスラエルによるハマスとの戦争が6ヶ月目に入り、ガザはますます不安定な状況に陥っていると警告した。
同氏によると、統合食料安全保障フェーズ分類報告書(IPC)によると、北部のガザ市民70%が 「飢饉に陥る、現実的な危険にさらされている 」という。
同氏は状況説明の中で、今月初めにワールド・セントラル・キッチンの援助職員7人が死亡した事件は 「一過性のものではない 」とし、「この種の事件は数多く起きている 」と述べた。
「国連はイスラエル国防軍と協力し、意思疎通していますが、ガザ地区内には、他の状況下でのように、適切な通信機器がないのです。人道支援者として、互いに連絡を取ることもできないまま、非常に敵対的な地域で活動しています。無線もなければ、携帯電話も使えないのです。そのため、OCHAやラファの他の組織にメッセージを伝え、それを中継する方法を見つけなければなりません。例えば、深刻な治安上の問題が発生した場合、イスラエル軍と連絡を取る必要があったり、検問所での問題に対処したり、その過程で何か問題があっても、連絡する手段がないのです」と同氏は続けた。
「もうひとつ言えることは、(イスラエル)兵士の武器に対する規律や、検問所でのモラルには本当に課題があるということです。何度も何度も、そのことに注意を向けさせようとしてきました」と同氏は語った。
マクゴールドリック氏は、そういったイスラエル軍との意思疎通の不具合が、ガザへの援助の流れを妨げていると述べた。
「イスラエルは、ケレム・シャローム検問所から、パレスチナ側にトラックが到着した時点で、責任は終わったと考えています。しかし彼らの責任は、援助物資がガザの市民に届いたときに終わるのです。そのためには、より円滑に、より多くのルートを確保し、職員が移動する際の安全を確保する必要があります。今のところ、安全が確保されていないのです」と同氏は語った。
同氏は、戦争がガザの基本的なインフラに与えた犠牲は、援助物資の配達を妨げる一因にもなっていると述べた。
「道路は非常に悪い状態です。国連は、ガザ全域で人道支援を拡大するため、あらゆる可能なルートを利用することを約束しています。今現在、イスラエルによって多くの約束がなされ、多くの譲歩がなされています。私たちの移動能力という点では、北部への輸送を確保できる承認もないので、特筆すべき改善は見られないと思います」と同氏は述べた。
ガザ北部の飢饉を避けるためには、ガザ北部に物資を供給するルートを増やすことが不可欠だ、とマクゴールドリック氏は語る。
「私たちにできることは、ただ(イスラエルに)念を押し続け、(国連)主要加盟国からの圧力を利用して、イスラエルの約束と、長い間求めてきた約束を思い出させることだけです。というのも、IPC(最近の飢饉報告書)によれば、北部には飢饉に陥る危険性が最も高い人々が多く住んでいるからです。援助物資をガザ全域、特に北部に届ける機会を拡大しなければ、大惨事に直面することになります。北部の住民は、とても脆く不安定な生活を送っているのです」と同氏は警鐘をならした。
マクゴールドリック氏はまた、真水へのアクセスが困難であること、イスラエルの軍事作戦によってガザの保健衛生が壊滅的な打撃を受けていることを指摘した。
「住民は、必要最低限の水というより、非常に少ない水しか持っていません。その結果、安全で清潔な水の不足による感染症や、衛生システムの破壊が、(そこに住む)住民に問題をもたらしています。アル・シファとナセル、この2つの大病院は多大な被害を受け、破壊されました。現在、ガザにある4分の3の病院が閉鎖され、必要最低限の医療を提供する病院のほとんどが閉鎖されています。麻酔なしで切断手術が行なわれているという話も聞きます。流産も大幅に増えています。C型肝炎、脱水症状、感染症、下痢など、感染症が急増しています。そして明らかに、我々の援助物資供給網が非常に脆弱であることを考えると、十分な支援を届けることができていないのです」と同氏は語った。