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イスラエルの病院で新型コロナウイルスとの闘いを先導するアラブ人医師

社会的に取り残されがちなイスラエルのアラブ人コミュニティは今、先例のない健康危機との闘いで重要な役割を果たしており、イスラエル・アラブ人のキタム・フセイン医師は同コミュニティにおいてその名を広めつつある。(AFP)
社会的に取り残されがちなイスラエルのアラブ人コミュニティは今、先例のない健康危機との闘いで重要な役割を果たしており、イスラエル・アラブ人のキタム・フセイン医師は同コミュニティにおいてその名を広めつつある。(AFP)
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28 Apr 2020 08:04:00 GMT9
28 Apr 2020 08:04:00 GMT9
  • キタム・フセイン医師は、ハイファ近辺にあるランバム病院で、新型コロナウイルス感染拡大への対応を統率する
  • フセイン医師にとって大事なのは、アラブ人であろうとユダヤ人であろうと、患者の命を救うことだ

イスラエル、ハイファ:イスラエル・アラブ人のキタム・フセイン医師は、2月以降毎朝のように日の出前に起床し、新型コロナウイルスとの闘いの最前線へと勤務に出向いている。

社会的に取り残されがちなイスラエルのアラブ人コミュニティは今、先例のない健康危機との闘いで重要な役割を果たしており、フセイン医師(44)は同コミュニティにおいてその名を広めつつある。

フセイン医師は、ハイファ近辺にあるランバム病院で、感染拡大対応のリーダーを務める。北イスラエル最大の同病院は、何か月にもわたり一日12時間勤務を続けている。

「とてつもなく難しい仕事です。毎日のように新しいことが起こります」とフセイン医師は語る。

「私たちの生活は一変しました」

イスラエルでは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数は1万5000人、死亡者数は202人にのぼる。

フセイン医師は、世界的なパンデミックの中、思い出に残るような患者とのひとときがいくつかあったと語る。

ウイルスで重体におちいった年配夫婦が病院を訪れた時のことを、フセイン医師は話してくれた。

夫の病状が急速に悪化し、病院側は夫婦が最後のひと時を一緒に過ごせるよう手配した。

「奥さんの具合は良くありませんでしたが、病院は彼女が夫と話すことを許可し、さようならを言えるように手配しました」と医師は言う。夫はその直後に亡くなった。

「私たちも人間ですから心が痛みました。医療スタッフは皆、悲しい思いをしました」

イスラエル・アラブ人とは、ユダヤ人国家が独立を宣言した1948年以降も国内に留まったパレスチナ人の子孫である。

人口の約20パーセントを占め、医療に従事する者が多い。

2018年にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の政権は、イスラエルをユダヤ人の国民国家と宣言する法案を国会で可決し論議を呼んだ。

イスラエル・アラブ人やその他の少数派は、法案は同国に居住する彼らの権利を否定するものだと批判した。

今回の健康危機でこの論議が再燃した。イスラエル社会におけるアラブ人の役割は、前線で働く医療従事者がその大部分を占めるためだ。

著名なイスラエル人アーティストたちが、ランバム病院のためにオンラインで資金を集め、アラブ人とユダヤ人の共存のシンボルとしてかかげた。

フセイン医師個人も何度も注目を浴びている。

イスラエル議会で最大野党の党首を務め、国民国家法の反対派でもあるヤイール・ラピド氏は、ネタニヤフ氏はアラブ人医師の貢献を常に無視してきたと主張する。

ラピド氏はTwitterで最近、「もしあなたが、何週間も十分な睡眠を取らずに病院で働いてきたアラブ人医師あるいは看護師だとしたら、彼らには国民国家法を改正する気はないということを知っておいた方がいいだろう」と書いている。

2009年より政権の座に就いている保守派のネタニヤフ首相は現在、中道派の政敵である元ラピド派のベニー・ガンツ氏との連立政権樹立に向けた最終調整を行っている。

ラピド氏は、元軍参謀総長のガンツ氏がネタニヤフ氏との連立を求めることを決意した際、同氏と決別した。

フセイン医師にとって大事なのは、アラブ人であろうとユダヤ人であろうと、患者の命を救うことだ。

フセイン医師は、北東部に位置するラメーという町で生まれ、現在はガリラヤのカルミエル市に住んでいる。

新型コロナウイルスによる危機は家族との生活に多大な犠牲を強いたという。

ウイルス感染に対する恐れから、フセイン医師は年老いた母親に2か月近くも会っていないという。

また弁護士を務める夫は、家で8歳と10歳になる娘たちの面倒を見ている。

どんどん成長する娘たちに会えないのが一番つらいとフセイン医師は言う。

長時間のシフトを終えて帰宅すると、すぐに衣類を洗濯機に入れ、シャワーを浴びてから娘たちに会う。

「ほとんどの場合帰宅時間が遅いので、娘たちは寝ていることが多いのですが、私が帰るまで起きて待っていてくれることもあります」

長時間の勤務や家族への感染に対する恐れから、家に帰宅するのをやめた同僚もいるという。

「両親に会うのはやめましたが、娘たちに会うのをやめることはできませんでした」とフセイン医師は言う。

「娘たちにどれだけ会いたいかは言葉では言いあらわせません」

最近、下の娘のハラちゃんが慌ただしいシフトの最中に電話をかけてきたという。

「泣きながら『ママに会いたい、いつ帰って来るの?』と言われました」「少しの間くじけそうになりましたが、気を取り戻して仕事に戻りました」

AFP

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