
デイル・アル・バラ:国連によると、ガザのパン屋は1週間以内にパンに使用する小麦粉を使い果たすという。各機関は家庭への食糧配給を半分に減らしている。市場にはほとんどの野菜がない。イスラエルの砲撃により、多くの援助関係者は移動できない。
イスラエルは4週間にわたり、ガザ地区の200万人以上のパレスチナ人に対する食料、燃料、医薬品、その他の物資の供給源をすべて遮断している。ハマスに対するイスラエルの17ヶ月に及ぶ作戦の中で、最も長い封鎖であり、解除する気配はない。
援助関係者は、手持ちの物資を切り詰めているが、深刻な飢餓と栄養失調の壊滅的な急増を警告している。戦争によってガザではほとんどすべての食糧生産が破壊されているため、援助の流れが回復しなければ、最終的に食糧は完全に底をつくだろう。
ガザ北部のジャバリヤにある国連物資配給センターから毎月の食料を受け取る3児の母、ショルーク・シャムラクさんは、彼女と子供たちは、食事の量を減らして一か月食いつなぐのだという。「もしここが閉鎖されたら、他に誰が食料を提供してくれるのでしょう?」と彼女は続けた。
世界食糧計画(WFP)は木曜日、業務用の小麦粉は火曜日まで1日80万人分のパンを生産し続けるのに十分な量しかなく、全体的な食糧供給は最大でも2週間しか持たないと発表した。他のすべての食料が枯渇した場合 「最後の手段」として、41万5000人分の栄養強化ビスケットを緊急備蓄している。
燃料と医薬品は、ゼロになるまでに数週間はもつだろう。病院では抗生物質や鎮痛剤の配給が行われている。援助団体は、援助物資を運ぶトラック、パンを作るベーカリー、水を作る井戸や淡水化プラント、機械を稼働させる病院など、必要不可欠な複数のニーズに限られた燃料を振り分けている。
「不可能な選択をしなければなりません。すべてが必要なのです」と、オックスファム・インターナショナルのガザ対策リーダー、クレマンス・ラグアルダ氏は水曜日のブリーフィングで、ガザ中心部のデイル・アル・バラから、「優先順位をつけるのは非常に難しい」と語った。
問題をさらに深刻にしているのは、イスラエルが3月18日に軍事作戦を再開し、保健当局者によれば、数百人のパレスチナ人(そのほとんどが女性と子ども)を殺害する砲撃を行ったことだ。国連によれば、人道的施設も打撃を受けている。新たな避難命令により、14万人以上のパレスチナ人が再び避難を余儀なくされている。
しかしイスラエルは、援助団体が砲撃を受けないよう確認するため、その動きを軍に通知するシステムを再開していない、と複数の援助関係者が語った。その結果、さまざまな援助団体が、移動の安全が確保できないため、水の配達や栄養失調の子どもたちへの栄養補給、その他のプログラムを中止している。
援助調整を担当するイスラエル軍のCOGATによれば、このシステムは停戦中に停止され、現在は「政策と作戦評価に従って、現地の状況に基づいて」一部の地域で実施されているという。
物価上昇で食料が手に入らない
1月中旬に始まった42日間の停戦期間中、援助団体は大量の援助を搬入した。商業市場にも食料が流れ込んだ。
しかし、イスラエルが3月2日にその物流を断ち切って以来、ガザには何も搬入されていない。イスラエルによれば、包囲網と新たな軍事作戦の目的は、ハマスに停戦合意の変更を受け入れさせ、さらに人質を解放させることだという。
ガザの市場では、新鮮な農産物はほとんど見かけなくなった。肉、鶏肉、ジャガイモ、ヨーグルト、卵、果物は完全になくなったとあるパレスチナ人は語った。
それ以外のものの値段は、多くのパレスチナ人にとって手の届かないほど高騰している。玉ねぎ1キロ(2ポンド)は14ドルに相当し、トマト1キロは見つかったとしても6ドルだ。調理用ガスの値段は30倍にも跳ね上がり、家族は火をおこすための薪をあさる生活に戻っている。
ガザ市の教師で3児の母でもあるアビール・アル・アカーさんは、「まったく正気の沙汰ではありません」と語り、「食べ物もサービスもないのです。飢饉がまた始まったのだと思います」と続けた。
援助に頼る家族がさらに増加
ジャバリヤの配給センターで、レマ・メガットさんは家族10人分の食糧配給箱を整理した。米、レンズ豆、イワシの缶詰数個、砂糖半キロ、粉ミルク2パック。
「ひと月分もないです。この1キロの米は1回で使い切ってしまいます」と彼女は語った。
国連は食糧配給を半分に減らし、より多くの物資をパン屋や惣菜を作る炊き出しに振り分けた、と国連人道問題調整事務所(OCHA)の報道官、オルガ・チェレフコ氏は語った。
パン屋はより多くのパンを製造している。しかし、その分、物資の消費は早い。
ノルウェー難民評議会のギャビン・ケレハー氏は、「小麦粉が間もなく底をつくと、ガザの大部分でパンの生産ができなくなる」と述べた。
パレスチナ人のための国連の主要機関であるUNRWAには、数千個の食料小包と数日分の小麦粉しか残っていないと、同機関の所長代理であるサム・ローズ氏は述べた。
「ガザ・スープ・キッチンは、主要な炊き出しのひとつだが、肉や多くの農産物を手に入れることができないため、缶詰の野菜とご飯を提供しています」と共同設立者のハニ・アルマドホン氏は語った。
「さらに多くの人々が配給を受け、さらに必死になっています。人々は食料のために戦っています」と同氏は続けた。
イスラエルは包囲網を解除する気配を見せない
米国は2023年10月の開戦時、イスラエルが約2週間の封鎖を行った後、援助をガザに搬入するようイスラエルに圧力をかけたが、今回はイスラエルの政策を支持している。
人権団体は、これを戦争犯罪になりかねない「飢餓政策」と呼んでいる。
イスラエルのギドン・サール外相は月曜日の記者会見で、「イスラエルは国際法に従って行動している」と主張した。
同相は、ハマスが援助物資を盗んでいると非難し、イスラエルは戦闘員に横流しされる物資を搬入する必要はないと述べた。
包囲網が解除されるかについて言及しなかったが、ガザには十分な物資があると述べ、停戦中に搬入した援助物資を指摘した。
飢えと絶望が増大している
セーブ・ザ・チルドレンのガザにおける人道的対応リーダーであるレイチェル・カミングス氏は、「セーブ・ザ・チルドレンは、軍と搬入の動きを調整できないため、栄養失調の子どもたちに食料を提供するプログラムを中断しました」と述べた。
「栄養失調者の割合が増えることが予想されます。子どもたちだけでなく、思春期の少女たちや妊婦たちもふくまれます」と同氏は続けた。
停戦中、セーブ・ザ・チルドレンの人道政策責任者であるアレクサンドラ・サイフ氏は、約4000人の栄養失調の乳幼児や子どもたちを正常な体重に戻すことができたと述べた。
デイル・アル・バラにあるセーブ・チルドレンの診療所には、1日に約300人の栄養失調の患者が訪れていたという。患者が砲撃を恐れるあまり、その数は激減し、ゼロになった日もあるという。
複数の危機が絡み合っている。栄養失調により、子供たちは肺炎や下痢などの病気にかかりやすくなる。清潔な水がなく、混雑した環境はさらに病気を蔓延させる。負傷者で手一杯の病院は、限られた物資を他の患者に振り分けることができない。
援助関係者は、パレスチナ人だけでなく、職員らも絶望に陥り始めていると語った。
「世界は羅針盤を失っています」とUNRWAのローズ氏は述べ、「何が起きてもおかしくないという感じがここにはありますが、国際社会が『もうたくさんだ』と感じるには十分ではないのです」と結んだ。
AP