
ベイルート:野党の政治家であるサミール・ジャアジャア氏は29日、レバノンがIMFからの支援を得られる可能性は非常に低いと指摘。ドナーが要求している改革を進められていないことが理由だという。
「残念ながら、(状況は)さらに悪化しています」、「社会不安、そして社会的暴力につながる可能性もあります。」と彼は懸念を示す。
1975~90年の内戦以降、レバノンの安定にとって最大の脅威となった、宗派主義エリートの腐敗と悪政に対する大規模デモが昨年10月に発生し、長期的な財政危機はピークに達した。
その後、同国の通貨価値は半分以下に下落し、銀行の預金は凍結された。また、輸入に大きく依存するレバノンの失業率とインフレ率は急上昇した。
ジャアジャア氏は議会で2番目に多い議席数を持つキリスト教政党であるレバノン軍団の党首で、イランが支持するシーア派組織ヒズボラと、そのキリスト教系同盟勢力で、共に政権を支持するミシェル・アウン大統領の自由愛国運動に対抗している。
米国とその湾岸アラブ同盟国と政治的に足並みをそろえているジャアジャア氏は、「レバノンの状況は、救いようがないという訳ではありません。しかし、10月17日にデモが発生してから、国政に何か変化がありましたか」と問う。
「国のトップの行動を変えずに、どのように国を救うことができるでしょう。」
ジャアジャア氏率いるレバノン軍団は、ハッサン・ディアブ首相が改革を行わなかったとして、10月のデモ発生後まもなく政府から脱退した。他に融資の調達先がない政府は、5月にIMFとの交渉を開始した。だがジャアジャア氏は支援を確保できる確率は「非常に低い」と指摘する。
「現政権が発足した瞬間から、世界は改革を待っていました。しかし要求された改革は1つも実現していません。」「求められる改革を行わなければ、誰もレバノンを支援してくれるわけがありません。」と話す。
政府は金融システムにおける莫大な損失を提示した経済回復計画を作成し、IMFとの交渉の土台として使っている。
ジャアジャア氏は、政府は2つの重大な問題を解決できなかったと指摘する。シリアへの密輸と、年間20億ドルを無駄にしている国営の電力セクターで、この責任は自由愛国運動にあると彼はいう。
大量の武器を持ち、国連からテロ集団として指名されているヒズボラは、シリアへの密輸との関与を長い間否定し続けている。自由愛国運動リーダーでアウン首相の義理の息子でもあるジブラーン・バシール氏は、電力部門の改善計画は他者によって阻まれてきたと主張している。
ロイター