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関係を深める日本と欧米

2023年5月21日、広島で開催されたG7サミットで、ウクライナに関する会議の前に記念撮影を行う首脳ら。(AP)
2023年5月21日、広島で開催されたG7サミットで、ウクライナに関する会議の前に記念撮影を行う首脳ら。(AP)
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29 May 2023 12:05:25 GMT9
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関係を深める日本と欧米

アンドリュー・ハモンド

ロシアによるウクライナ侵攻以来、国際関係の際立った特徴の1つは、欧米と日本の関係の強化である。これは、先週、広島で開催されたG7サミット(主要7カ国首脳会議)でも改めて示された。よく組織されたG7広島サミットは、地政学的な分野を含む一連の重要な外交成果につながった。

さらに、昨年、岸田文雄首相は日本の首相として初めてNATO首脳会議に出席し、また、米国、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドの「ファイブアイズ」同盟のような欧米の情報フォーラムに日本が招待されるとの憶測もある。

これらの例は、関係強化をめぐる関心の多くが防衛と諜報の分野に集中していることを示している。これは、ウクライナ戦争が始まって以来、欧州におけるロシアの脅威と、アジア太平洋における中国の台頭に対する日本の懸念を結びつけようとし、対中国政策における欧米の支援を確保しようとする日本の野心を反映している面もある。

しかし、そのような安全保障政策のレーダースクリーンの下で、ウクライナ戦争が始まって以来、はるかに目立たないものの協力が強化されている別の分野は、持続可能性の課題を中心としたものだ。例えば、ロシアの侵攻からわずか数か月後の、エネルギー市場がまだ高騰していた2021年5月に、日本と欧州連合(EU)は、環境保護を強化し、生物多様性の保全に力を入れ、気候変動と積極的に戦うことにより、今後数十年で日本とEUが化石燃料中心の経済から多様化し、クライメート・ニュートラル(気候中立)で、循環型かつ資源効率的な経済への移行を加速させるための「日・EUグリーンアライアンス」に合意した。

ここ数週間でも、日本とカナダはこのグリーン・アジェンダをめぐる協議を行い、岸田首相はオタワでカナダのジャスティン・トルドー首相と会談し、原子力サプライチェーンをより強固にするための協力など、エネルギー転換において両国がどのように協力を改善できるかを探った。カナダ政府は今秋、代表団を率いて日本を訪問する予定であり、電気自動車のバッテリー部品などの分野に関心のある日本企業は来春、カナダを訪問する予定だ。

しかし、この分野での最新の重要な合意は、先週、岸田首相と英国のリシ・スナク首相が発表した日英の新しい「サステナビリティ・エネルギーパートナーシップ」だ。現在、日英関係は開花しており、日本は「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」への英国の加盟を最も強く支持している国の1つである。

現在、日英関係は開花しており、日本は「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」への英国の加盟を最も強く支持している国の1つである。   アンドリュー・ハモンド

日英の新たなサステナビリティ協定は、二国間の政治的関係を深めるだけでなく、経済的関係も深め、両市場間の新たな投資の波を呼び込むことになる。英国の例を挙げると、米国の「インフレ抑制法」やEUの「ネットゼロ時代に向けたグリーンディール産業計画」による補助金政策に対抗するため、日本や他の主要国とともにこの課題を推進する大きなインセンティブを持っている。

世界経済が現在の約90兆ドルから、世界が排出量ネットゼロを達成する可能性のある21世紀半ばには190兆ドルに達すると予測される中、英国の利害関係者の間では、増加するグリーン投資の波に乗り遅れるのではないかという懸念が高まっている。英国政府が1月に発表したスキッドモア下院議員によるネットゼロ達成に向けた政策に関する報告書「スキッドモア・ネットゼロ・レビュー」でも、英国が新たなグリーン投資の大部分を失うリスクがあると指摘されている。

しかし、こうした課題にもかかわらず、英国には、日本が認識し、高く評価する、この分野における長年の強みがある。例えば、英国は、エネルギーや化学のプラットフォームにおける技術導入など、持続可能性や環境の問題に対して、EUよりも現実的なアプローチをとる傾向がある。

例えば、プラスチックの循環型経済の場合、EUは再利用やリサイクルに関する拘束力のある法的な目標を推し進めているが、これは供給インフラの現実や、大規模な投資に対する企業の意欲によって明らかに裏付けられているわけではない。英国は概して、新型コロナのパンデミックやウクライナ戦争開始以来の現在の経済的圧力を考慮し、「理想的」ではなく「より良い」解決策を実施することで、より現実的な対応をしていると言える。

英国ではすでに風力発電の設備容量が多く、配電インフラや風力発電の断続的な性質を補い管理するための大規模な貯蔵など、日本や世界各国のイノベーションの格好の実験場となる可能性がある。その結果、英国を拠点とする差別化された技術が出現したり、日本企業によってそのような技術が持ち込まれる必要性が生まれたりする可能性もある。

英国はまた、ロンドン市を通じて金融業界の強さと柔軟性の恩恵も受けており、海外からの資金調達に苦労することもある日本にとっては関心を引く存在である。エネルギー転換には多くの資本が必要であり、日本は英国のベストプラクティスから学ぶことができ、その逆もしかりである。例えば、英国は革新的なグリーンテクノロジーの開発を支援するためのフィンテックの利用で高い実績を誇る。

アジアやその他の地域で、このような日英の企業連携が相互に補完し合う可能性のある例は、二酸化炭素の回収と貯蔵、原子力発電、デジタルソリューション分野などのエネルギー転換である。日本が原子力発電のサプライチェーンに必要なすべての技術を単独で手にすることは困難であり、小型モジュール炉の開発などにおいて、英国のような共通の価値観を持つ国々と協力できる可能性がある。

総じて、欧米と日本の関係強化は、「ハード」な安全保障分野で最も注目されるものである。ただし、こうした関係改善の範囲はより広いものであり、今後数年間でクリーンエネルギー投資の重要な新しい波を推進するのに役立つ可能性のある「ソフト」な環境問題もそこには含まれる。

アンドリュー・ハモンド氏は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのLSE IDEASのアソシエイトである。

 

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